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インタビュー
株式会社リクルートキャリア 就職みらい研究所 岡崎仁美所長、
新卒メディア事業本部 メディアプロデュース統括部 メディア企画1部 松浦太郎部長に聞く

「採用難」に対する危機感がいっそう高まる中、
AIなどの最新テクノロジーと人ならではの力の融合で企業と学生の相互理解を進化させる「リクナビ」

2018年卒の新卒採用は、2017年卒の採用活動と同じく、広報開始日(説明会解禁)3月1日、選考開始日6月1日というスケジュールになった。大卒求人倍率は1.78倍と前年度(1.74倍)とほぼ同水準だが、従業員規模、業種間の倍率差はさらに拡大している。このような状況下、人事・採用担当者はどのように採用活動を展開していけばいいのか。2018卒採用マーケットの動向と今後の展開について株式会社リクルートキャリア就職みらい研究所の岡崎仁美所長に、また、同社が運営する「リクナビ」の最新の特色についてメディア企画1部松浦太郎部長に聞いた。
(取材日/2017年7月25日)

求人倍率1.6倍以上が4年続く厳しい採用環境下、企業に求められる対応とは

―― 最初に、2018年卒採用の現状をお聞かせください。

岡崎:近年、新卒求人倍率は高い水準を保っていて、2018年卒は1.78倍でした。新卒採用市場を長年見つめてきて言えるのは、企業にとって1.6倍が“分岐点”であること。1.6倍を超えると企業の採用に対する危機感が急激に高まり、「採用難」と認識して採用活動が過熱化します。この1.6倍を超える状態が今年で4年も続いており、企業の「採用難」に対する危機感がいっそう募っているのを実感します。ちなみに1.3倍を切ると、今度は学生が「就職氷河期」を迎えていると報じられるようになり、就職への不安を募らせる傾向もあります。採用スケジュールに関しては、採用広報解禁日が3月1日になって、今年で3年目を迎えました。選考開始時期は前年と同じ6月スタート。ガイドライン変更への対応にパワーを割かれた昨年までとは異なり、2018年卒の採用活動は、企業にとって昨年の経験を活かして臨むことができる久々の年になりました。

その結果、7月1日時点での内定率は79.1%と非常に高くなっています(昨年71.1%)。採用広報がスタートして間もない4月の段階で既に昨年比プラス5ポイントでしたが、その後も、昨年の内定率を10ポイント前後上回る状態が続いていて、かなり早い段階から内定出しが行われていたことが分かります。ただ、あまりスピーディーに内定を出してしまったため、自社に就職することへの納得感が本当に醸成できているのか、入社後の活躍、定着を懸念する人事・採用担当者は例年以上に増えたと感じます。

株式会社リクルートキャリア 就職みらい研究所 岡崎仁美所長 photo

そうした人事の方にさらに深くお話しをうかがうと、「内定出しの段階までに『働く覚悟』を問う会話ができなかった」という言葉が聞かれます。そもそも、そういった会話をする時間が物理的に減少したという事情に加え、売り手市場の中で強く迫ることが難しいというジレンマもあるようです。しかし貴重な新入社員の入社後活躍を促すためには、その不安や懸念をそのまま見過ごすのではなく、今まで内定を出す前に問うていたことを、内定者フォロー後のプロセスの中に、しっかりと埋め込む必要があるでしょう。その際のポイントは、受け入れ先の職場の人たちとの連携を深めること。入社するまでだけなく、その後いかに活躍してもらうのか。内定後も含めたコミュニケーションをどうするかを具体的に描き、関係部署と連携を取りながら施していく流れを作ることが重要です。

大企業とは異なる、中堅・中小企業の動き

―― 今年は、インターンシップが話題になりましたね。

岡崎:10年前の2007年頃にも流行しましたが、例えば同じ「1Day」と呼ばれるものでも、当時と現在とでは中身が随分と違います。当時はセミナーめいたものが大半でしたが、現在は「インターンシップ=就業体験」という共通認識がかなり広がったこともあり、単なる説明会のようなものの割合は激減しています。また就業体験の内容もかつてのように完全な現場任せではなく、事前に現場の仕事を構造化し、一つのパッケージにして、限られた時間で仕事のエッセンスが学べるように工夫されたものも増えています。大手企業はこのようなインターンシップの一般化が進んだことも含めて、2018年卒採用では、どのようにして自社で活躍できる人材と出会える場を作り、いかに動機付ければいいのか、ある程度の設計ができたのではないかと思います。

一方、中堅・中小企業は、厳しい採用活動が強いられています。このような短期決戦型の採用活動においては、採用に割く人員や資金の差で雌雄を分ける傾向がより強くなってしまうからです。そのため、ポイントになるのは、学生から注目を集めるような話題性。「エントリーシートなし」「志望動機は聞かない」など、他とは違った採用手法を取ることで、学生の関心を集めようとした施策が目立ったのが今年の特徴です。

話題作りをすることによって、会社の中のいろいろなシステムを変えなければならなくなることもありますが、それによる「インナー効果」はとても大きいと思います。「良い人材を採用しなければ、うちの会社は維持することができない」という危機感が生まれたことで、採用を見つめ直すためのコミュニケーションが、実に多くの企業で行われました。2018年卒では効果が出なかった会社もあるかもしれませんが、改めて「何のための新卒採用なのか」「他社ではなく、当社で働くことにどういう魅力があるのか」といったことを見つめ直す経験は、必ず今後につながります。

早期内定出し、個別対応がいっそう進む

―― 2019年卒については、どのように予測されていますか。

岡崎:5月の段階で、2019年卒に関する採用意欲を聞いていますが、「増やす」と答えている企業が16.4%。「変えない」が一番多いのですが、「減らす」は3.4%と少なく、「増やす」から「減らす」を引いた割合は13ポイントに達し、しかもどの企業規模でも二桁という状況です。特定規模に偏ることなく、全般的に採用意欲はまだまだ高い状態が続いています。

2018年卒採用で起きた現象として、エントリーシートの締め切りが前倒しになったことが挙げられます。昨年は4月末、GW明けがトップ2の山でしたが、今年は3月末に集中しました。どうしてこのようなことが起きたのかと言うと、前述したようにインターンシップが盛んになったからです。インターンシップへの参加によって企業や業界に関する理解が深まった学生は、企業にとっては、いわば「話が早い」学生たちです。彼らに対しては、採用広報を開始したらすぐに、エントリーシートの提出や適性検査の受験を依頼する、というスタイルで選考が進められた、というわけです。2019年卒採用では、インターンシップを実施する企業がさらに増えるでしょう。別ルートによる選考も当然増えることになり、内定出しはさらに早まると予想しています。

株式会社リクルートキャリア 就職みらい研究所 岡崎仁美所長 photo

近年は採用手法が多様化し、高校生に「内定パス」を出す企業や、30歳までを新卒扱いとする企業もあります。人口が減り、個人の価値観が多様化する中で、採用においても個別に対応していく流れははある意味必然であり、その後の育成も含めて、一人ひとりをモニタリングする人事管理へと、マネジメントの方向が変化しています。テクノロジーが発達したことも、そうしたことを可能にする後押しとなりました。2019年卒採用では、この流れがもっと一般化していくと思います。

学生と企業により合った「出会いの機会」の創出を進化テーマに置く

―― 採用を取り巻く環境が大きく変化する中で、「リクナビ」はどのように対応していこうとお考えですか。

松浦:リクルートでは創業以来、大事にしていることがあります。「学生は自分に最もふさわしく、自分を伸ばせる企業を選び、企業は明日の繁栄を担う人材を求める。この二つのことを両立していくには、企業と学生間のコミュニケーションが十分に成立していなければならない」。新卒採用では、このような「コミュニケーションエンジニアリング」が大前提だと考えます。

企業にとって厳しい採用環境が依然として続いていますが、それは学生にとっても、自分が求める企業を探すことが難しい、ということを意味しています。その点を踏まえて2019年卒採用で注力したいのは、すべての学生と企業に、より合った「出会いの機会」を創出すること。これを、「リクナビ」の進化テーマとして置いています。

その際に必要になるのは、人の力とテクノロジーの融合です。人とは、企業の採用をお手伝いする伴走者としての営業担当。特に新卒採用は中途採用と比べて、活動する期間が非常に長くなります。その間、当社の営業担当が顧客の状況をきちんと把握し、伴走しながら採用成功まで、しっかりとサポートします。一方で「リクナビ」では2013年頃から既にAI(機械学習)の仕組みを導入しています。年々技術は進歩していますから、我々の持っている何万社という企業、何十万人という学生のデータを元に、最新技術の活用をさらに進めていきます。これらのデータを多方面から解析し、その結果を学生一人ひとり、企業1社1社に対して個別にフィードバックします。技術が進展し、蓄積データ量が増加する中、「リクナビ」が提供できる新しい価値もどんどん進化してきています。

具体的に説明しましょう。当年の採用活動が終わった後、いろいろなデータを使って振り返りを行いますが、自社へのエントリー者や会社説明会への参加者、内定者など、採用プロセスの各フェーズにおいて、どのような属性の学生がいたのかを明確にします。そして、各フェーズを一つの起点とし、前後で学生がどのような動きをしたのか、あるいはどんな業界を併願していたのかについて、全て可視化しました。

株式会社リクルートキャリア 新卒メディア事業本部 メディアプロデュース統括部 メディア企画1部 松浦太郎部長 photo

可視化することで例えば、3月はある業界を併願している学生が多かったけれど、4月・5月になると併願先が変わってきた、といったことがわかります。つまり、時期によって戦う相手が変わることが具体的に分かるのです。また、エントリー者と内定者とではタイプや属性に違いがある、といったことが判明したりします。多面的な分析を行いながら、翌年の新卒採用ではどういう層に向けてアプローチを行うべきかなど、「ターゲティング」に向けての対話をより進化させます。

自社に興味を持っている学生を可視化すると同時に、自社がぜひほしいと考えている学生も可視化。採用成功に結び付けるにはどのようなコミュニケーションが必要なのか、採用成功に向けた具体的な対策を示せる伴走者であることを、2019年卒採用では強く意識していきます。

学生と企業が相互理解できる採用活動を設計する

―― 昔からリクルートは営業担当者の顧客理解と対応が秀でていましたが、現在はそれに最先端のテクノロジーが加わり、膨大なビッグデータがひも付くことによって、最適な採用活動とマッチングを実現しているわけですね。

松浦:きちんとしたレポーティングはもちろん、なぜそうなったのか、今後どうしたらいいのか。個別データと最新のテクノロジーを総動員すると同時に、他社の動向なども見ながら、顧客と一緒に考え、具体策を提案していくことを強化していきます。そこにこそリクルートの価値がある、と考えるからです。この考えをより進化させているのが、2019年卒採用の特徴です。

企業と学生のより良いマッチングを図るという点に関して言えば、2018年卒採用から「リクナビスカウト」を導入しました。学生に、企業から会社説明やプレエントリー(資料請求)の案内が届く仕組みで、企業が学生のOpenES(オープンイーエス)で興味を持った部分にマーカーを引いてフィードバックする機能を搭載しているので、学生は自分のどんな経験を活かすことができるのか、どのような能力を求められているのかなどを知ることができます。DMとは違った、学生一人ひとりの良いところを見てスカウトするダイレクトアプローチです。注目したいのは、企業規模による開封率の差がないこと。知名度の低い中小企業からも「とても効果がある」と高い評価をいただいています。非常に好評だったので、2019年卒採用ではさらに強化していく考えです。

さらに2018年卒採用から加えた機能に、動画サービス「リクナビキャスト」があります。文字や画像だけでは伝わりにくい事業内容はもちろん、職場の様子や雰囲気を見ることがでる、というものです。可視化することで企業と学生の相互理解を深め、最適なマッチングを実現するサービスです。圧倒的に情報量の多い動画を見ることで理解が具体的になるため、志望度は自ずと上がります。学生の企業理解、そして企業からすれば学生の理解促進という点で、非常に効率的なツールです。学生からの手応えがよく、2019年卒採用ではさらに強化を図っていきます。

学生が70万人いれば、70万通りの就職活動があります。我々は一人ひとりの状況に合わせてナビゲーションを行い、就職活動をサポートするキャリアセンターのような存在を目指しています。

岡崎:学生と企業の相互理解があってこそ、お互いに力を合わせ、まだ見ぬ未来を切り開いていけます。これからの時代、企業と働く人がそれぞれのことをしっかりと理解し、成長し合えるような採用活動が行われるようになれば、素晴らしいですね。企業の皆さまには、そのためのサポートをしっかり行っていきたいと考えています。

株式会社リクルートキャリア 岡崎仁美さん、松浦太郎さん

企業データ

社名 株式会社 リクルートキャリア
本社所在地 〒100-6623 
東京都千代田区丸の内1-9-2グラントウキョウサウスタワー
事業内容 社員募集領域における人材採用広告事業/斡旋事業/選考支援事業
[厚生労働大臣許可番号 13-ユ-010258]
設立 1977年11月28日(商号変更2012年10月1日)
代表者名 代表取締役社長 小林 大三

会社情報

企画・編集:『日本の人事部』編集部

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