学生の本音から課題を抽出し、ネガティブな候補者体験ゼロへ
採用のDXを後押しする「ONE CAREER CLOUD」
対面・オンラインの併用が定着した新卒採用活動。早期化、長期化、通年化が進む中、成否の分かれ目はデジタルネイティブであるZ世代の価値観や志向性に合わせた候補者体験の設計にあるようだ。株式会社ワンキャリア 広報・PRチームEvangelist 寺口浩大氏に、学生の就活に対するニーズと、企業側が2024年卒採用に向け押さえておくべきポイントを聞いた。
新卒採用成功へ、選考での学生のネガティブ体験をゼロにすることが重要
―― 2023年卒の新卒採用は、どのような傾向が見られましたか。
2022年卒の特徴だった早期化・長期化・通年化が踏襲されたと見てよいでしょう。当社が運営する学生向けの就活支援サイト「ONE CAREER」と企業向け採用支援サービス「ONE CAREER CLOUD」のデータからは、学生の企業エントリー数のピークが、大学3年生の5月ごろに来ていることがわかります。多くは夏休み期間のインターンシップへのエントリーで、「就活は大学3年の夏から」ということが定着しつつあります。
―― 企業側の採用活動の成否の分かれ目は、どこにあるのでしょうか。
説明会や面接などの選考過程で、学生にどのような体験を提供できていたかだと思います。新卒採用を成功させるためにはまず、悪い体験をいかにゼロに近づけるかが重要です。「ONE CAREER」には、学生が選考で体験した内容とその満足度を投稿する仕組みがありますが、なかには満足度が5段階中1という投稿もあります。
評価が低い企業への指摘内容はさまざまですが、「面接官が悪びれずに遅刻してきた」「圧迫面接だった」と、企業が高圧的で学生と対等な関係を築けていない事例も見かけます。また選考結果通知が遅いこと、通過者以外に通知が来ないことも不満につながっています。多くの採用候補者を抱え、調整に忙しいのはわかりますが、採用管理ツールなどの活用で改善できるはずです。
ダイバーシティやジェンダー、サステナビリティなどの新しい価値観への遅れも問題になりがちです。日々学生と接している採用担当者は理解していても、面接を担当した現場社員が時代にそぐわない質問を投げかけてしまい、社会課題に対する感度の高い学生たちが幻滅するという例も聞きます。
デジタルツールの使いこなしも気になるようです。オンライン説明会や面談で、上からカメラをのぞく角度になっていたり、顔が見切れたりするのは問題外。面接時にプレゼン資料を用意した学生が、画面共有の権限付与をお願いしたら、担当者が慌てふためいたといったこともあるようです。
共通するのは、企業が発するメッセージと現場の実態にズレが生じていることです。「誠実さ」「フラットな関係」「多様な人材の活躍」とアピールしているのに、いざ社員と接してみると「言っていることと実態が違う」となってしまう。DX推進を謳っている企業の社員が、オンライン会議ツールの操作すらおぼつかないようでは、学生から「大丈夫だろうか」と不安に思われても仕方がないでしょう。
こうした学生の不満や不安の声は、企業には見えにくいものです。選考後にアンケートを取っても、選考結果に響くと思われて、本音で答えられません。
学生同士の情報網強化と転職を視野に入れたキャリア観
―― 2024年卒の採用に向けて、注目すべき学生の動向を教えてください。
情報収集手段の複雑化・多様化です。企業だけでなく、学生自身の発信も重要な情報源になっています。私たちのようなCGM(Consumer Generated Media;ユーザーの投稿によるメディアのこと)やSNSでの投稿などが挙げられます。
学生がSNSで「○○社の説明会に参加しました」と投稿すると、フォロワー以外の学生からも「どんな内容でしたか?」とDMが届くそうです。また、LINEやInstagramのグループによる情報交換も活発です。これらは仲間だけが集うクローズドな場なので本音を伝えやすく、選考でのネガティブ体験も広まりやすい。もし「採用広報に力を入れているのに、エントリーが集まらない」という会社があれば、目に見えないところで悪評が立っているかもしれません。
こうした学生同士のオンライン上でのつながりは、コロナ禍で大学に行けない状況が続いたことで強化されました。しかし2024年卒の学生は対面授業が復活していることもあり、オフラインでも情報が回ることが予想されます。
企業側の情報発信が大切なのは変わりません。とりわけ動画は重要なコンテンツです。学生が企業を研究する際、YouTube上で企業名を検索するのがスタンダードになっています。現代の学生にとって、YouTube上に企業の情報がないことは、検索エンジンで調べても企業ホームページがヒットしない状況に等しく、広報力に大きく後れをとっていると言わざるを得ません。
―― 学生の志向に変化は見られますか。
2021年から22年にかけてONE CAREER会員にアンケートを実施したところ、会社選びで重視することの1位に「やりたい仕事ができるか」が挙がりました。「就社」から「就職」に意識が移り、6割の学生が将来的な転職も視野に入れて就活していることが明らかになっています。
背景には終身雇用の崩壊があります。学生は、専門性や強みなど何かしらの人材市場価値をつけないといけないと危機感を募らせているのです。かつてはキャリアを点で捉え、就社重視で就活していましたが、今の世代は線の発想でキャリアと就職を考えているのが特徴です。
―― 企業は2024年卒採用に向け、どのように動くとよいでしょうか。
まずは採用選考での候補者体験の設計に本気で着手すべきです。インターン、説明会、面接、選考通知などの接点で、説明と実際の体験に矛盾が生じないようにする必要があります。ポイントはイベントに登場する現場社員や上級管理職の価値観のアップデートにあります。
採用市場の「マーケットがリセットされる」のは過去の話です。活動が長期化、通年化しているうえ、一度拡散した悪評はデジタルタトゥーとなり、何年にもわたり採用に響きます。事前に講習や説明会を行うなど、認識をそろえておくべきでしょう。
次に学生の欲しい情報を、学生が「見たい時期」に届けること。学生たちがどの時期に、どこに参加し、どのような媒体を見て情報を集めているのか。社内のマーケターにも協力してもらい、内定者にヒアリングをかけるなど、市場を把握することが必要ではないでしょうか。
コンテンツの質にも目を向けるべきです。会社説明会をオンラインで配信することは当たり前になりつつありますが、「どれだけ我が社を理解してもらうか」という観点に偏ったものが散見されます。学生はエンタメ系の動画配信サービスなど、オンデマンドコンテンツに慣れていて、アニメやドラマを1.5倍速で観る世代です。ダラダラとした一方的な説明だけの会社説明会動画では、学生たちは途中で離脱してしまいます。キャスティングや演出面にも配慮し、「説明会動画を見る体験」を充実させるべきでしょう。
マーケティング把握と効果的なコンテンツ発信を後押しするONE CAREER CLOUD
―― 学生はどのような体験や情報を求めているのでしょうか。
学生が知りたいのは、その会社で働いたときのリアリティです。企業の情報発信では、ジョブ・キャリア・カルチャーのオープン化がポイントになります。
ジョブは動画が有効です。現場で働く人の、ありのままの様子を伝えるといいでしょう。キャリアは転職も含め、入社後のキャリアパスを具体的に示すことです。以前、IT大手企業とオンラインイベントを実施したとき、最も好評だったのが、卒業生(転職者)を招き、その企業について語る企画でした。会社を離れた卒業生が「自分を育ててくれた」と会社への愛着を持ち続け、新たな場所でも活躍する姿から、企業風土を感じ取り、好印象を持った学生が多かったですね。
またカルチャーのキーワードは“複数”にあります。説明会で数人の社員がフランクに語り合う様子は、言葉で「フラットで風通しのいい風土」と伝えるよりもずっと説得力があります。逆に、上司ばかりが話して若手がほとんど発言していないのに「若手が活躍する企業」と訴えても、信ぴょう性に欠けるでしょう。学生たちは社員の振る舞いをよく見ているのです。
―― 貴社のサービスは、これからの時代の採用活動にどう機能しますか。
現在ONE CAREER CLOUDでは、「採用計画」「求人掲載」「スカウト」「ONE CAREER LIVE」「カンタン採用動画」を展開しています。「採用計画」ではONE CAREER上の体験談の閲覧を通じ、採用活動の課題を具体的に抽出できます。またベンチマークする企業の採用動向や大学のイベント期間がわかることから、最適なタイミングを考慮した採用計画を後押しします。
「求人掲載」はONE CAREER上でインターンや説明会、本選考を告知する機能です。月150万人以上アクセスするサイトへの掲載を無料で始められるうえ、通年採用にも対応しています。「スカウト」はONE CAREER登録者をさまざまな切り口で絞り込み、欲しい学生に直接アプローチできます。
「ONE CAREER LIVE」は近年、導入企業から好評を博しているサービスです。プロの司会者の進行によるクロストーク形式の会社説明は、専用スタジオで撮影。テレビ番組のようなクオリティで、ライブ配信では視聴者とチャットを通じて双方向性を演出できます。またアーカイブ配信機能もあり、幅広い層へのリーチが可能です。「カンタン採用動画」は、お手持ちの資料を使って作成した動画を、ONE CAREERアプリに掲載するサービスです。
採用市場が長期化する中、採用のDX化は急務といえます。私たちはサービスを通じて学生の本音をすくいながら、企業と学生との良い出会いをお手伝いしたいと考えています。
企業データ
社名 | 株式会社ワンキャリア |
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本社所在地 | 〒150-0043 東京都渋谷区桜丘町20番1号 渋谷インフォスタワー16階 |
事業内容 | キャリアデータプラットフォーム事業(採用DX支援サービス、その他) |
設立 | 2015年8月 |
代表者名 | 代表取締役社長 宮下 尚之 |