採用成功の第一歩は「早期選考」「対面ニーズ」への対応
就活時期に合わせてPRポイントの調整も必要
早期化・長期化が進む就職活動。そんな中で、学生の価値観は二極化が進んでいるという。株式会社ワンキャリア コンサルティングセールス事業部執行役員 小川勇輔氏に、企業が押さえておくべき学生の価値観やニーズ、26年卒採用の成功に向けて着目すべきポイントを聞いた。
「上昇志向」と「私生活重視」の二極化が進む
―― 2025年卒の学生の動きにはどのような特徴がありましたか。
まず目立つのは、就職活動の早期化と長期化です。大きな理由としては、大学3年生向けのインターンシップの増加が挙げられます。10年ほど前まで、インターンシップを実施しているのは一部の外資系やスタートアップに限られていましたが、近年では多くの企業が実施するようになりました。合わせて夏のインターンシップに参加する学生も増え、2025年卒では、大学3年生の6月までに就職活動を始めた割合が71.9%に上っています(※1)
一方で、就職活動を終える時期には変化がなく、結果として長期化が進みました。4年生になる前に1社以上の内定を持っている学生は全体の半数以上を占めますが、内定をもらっても就職活動を続ける学生は8割以上に及びます(※1)。「最後までベストなキャリアを探し続けたい」と考える学生が増えています。
※1 2025年卒 就職活動に関するアンケート、2024年2月 ワンキャリア調べ
―― 学生の価値観に変化はありましたか。
学生の価値観は、「上昇志向」と「私生活重視」の二極化が進んでいます。上昇志向については、YouTubeやXなどさまざまなメディアを活用して「この業界だとこれくらいの年収がもらえる」といった情報を得た上で、「自分はこれくらいの年収を目指そう」と考える学生が多いですね。バブル期のように、がむしゃらに働けばどんどん給与が上がっていくといった期待から来る上昇志向ではなく、日本の未来に期待せず、その中でどうすれば自分が生き残っていくことができるのかに視点を当てた、現実的な上昇志向と言えます。
一方で、「仕事だけに時間を費やすのではなく、プライベートも含めて自分の人生を満喫していきたい」と考える私生活重視の学生も増えています。こういった学生が重視するのは労働時間や残業時間、有給休暇の取得率などです。男性の育児休暇取得率を気にする男子学生も少なくありません。
―― 売り手市場の傾向が強まる中、企業の採用の成否はどこでわかれたのでしょうか。
まずは、大学3年生の夏に接点を持てたかが大きいですね。というのも、学生の志望業界は3年生の夏時点でほとんど固まってしまい、その後はあまり変わらないからです。次に、選考プロセスの中で対面を取り入れたかどうか。いまはインターネットやSNSで少し調べるだけで、その企業についての情報を簡単に得ることができます。だからこそ、「この情報は本当か」といった疑問を直接解消できる対面のニーズが高まっています。中には、「オフィスにゴミが落ちていたので、選考を受けるのをやめました」と話す学生もいました。
また、新型コロナウイルスの感染拡大時にはリモートワークを導入した企業が増えましたが、収束に伴い出社に戻す企業も目立ってきました。学生の立場からは、対面の機会を通じて実際の社員同士の関係性を確認しておきたいというニーズが高まっています。ただ、「対面であればOK」というわけでもありません。たとえば説明会に社員が一人しか登場せず、書かれていることをそのまま読み上げるようであれば、かえってネガティブな印象を持たれることになるでしょう。学生は、その企業の実情を知りたいのです。「対面にすることで学生が何を得られるのか」までしっかりと設計している企業が、採用で成果を出しています。
ほかには自社の強みをアピールする際、他社との比較や証拠まで示せている企業は強いですね。たとえば、単に「わが社には若手に裁量があります」と言うだけではなく、「他社ではこのくらいの規模のプロジェクトを主導できるのは5年目を超えてからですが、当社なら3年目で可能です」「新卒2年目でプロジェクトマネジャーになった社員がいます」といったように示している企業です。
早期選考・対面へのニーズにどう応えていくかが鍵
―26年卒の学生の動きについて教えてください。
学生の就職活動の開始時期はさらに早くなっています。「3年生のうちに1社は内定がほしい」と考える学生は4割近くに及び、早期選考へのニーズが高くなっていますね。「上昇志向」と「私生活重視」の二極化については、26年卒でも見られます。26年卒では、福利厚生やワークライフバランスを重視する学生がさらに増えていますね(※2)。
※2 2026年卒 就職活動に関するアンケート、2024年5月〜6月 ワンキャリア調べ
仕事そのものについては、「こういう仕事がしてみたい」といった憧れよりも、「自分に合っている仕事がしたい」「大学で学んできたことが生かせる仕事をしたい」といった思考を持つ学生が増加傾向にあります。選考プロセスの中でも、実際に現場で働いている社員らと面談し、業務についてかなり細かく理解した上で自分が活躍できるかを見極めたいと考える学生が増えています。
―― 企業は学生のどのようなニーズに応えていくべきでしょうか。
早期選考へのニーズにどう対応していくかは検討する必要があると思います。さらに、対面での接点づくりも、取り入れていくべきと言えます。基本的な流れとしては、説明会はオンラインで実施し、インターンシップやOB・OG訪問、最終面接は対面をマストにするといったやり方が現時点での最適解ではないかと思います。
就職活動が長期化する中で、会社から発信するメッセージも時期に応じて変えていくほうがいいですね。大学3年生の夏時点で動いている熱量の高い学生に対しては業務内容ややりがい、裁量をアピール。ほぼすべての学生が動き出す、4年生になる直前の時期には福利厚生や働き方を推していくことが効果的でしょう。
そのほか企業の中には、学生の約6割がいずれ転職することを視野に就職活動をしている実態を逆手に取り、「わが社に入社すれば、数年でどこへ行っても通用するスキルが身に付く」とアピールする企業もあります。学生に対し、まずはどのような形であれ関心を持ってもらい、接点を持つことを重視するやり方です。
―― きめ細やかな対応が求められる中、採用にあまり労力をかけられない中小企業やスタートアップはどうすればいいのでしょうか。
採用に労力をかけることが難しいスタートアップなどでは、ターゲットをかなり細かく絞っていかざるを得ない状態です。「●●大学の学生がほしい」といった粒度ではもはや優秀な人材を確保することは難しいため、「●●大学のどのサークルにどのような理由で入ったのか」までチェックした上で、個別にアタックしている企業もあります。学生の売り手市場が続くことが予測される中、まずはできる範囲で個別に対応していくことが求められます。代行サービスを利用する企業も増えてきていますね。
スカウト機能を強化、進化を続けるプラットフォーム「ONE CAREER CLOUD」
―― 改めて、貴社サービスについてご説明ください。
私たちが提供する人事向け採用クラウド「ONE CAREER CLOUD」は、東大や京大、早稲田、慶應といった大学群の学生登録率95%以上(※3)を占める新卒採用メディア「ONE CAREER」で収集したキャリアデータを活用しています。新卒採用のサービスは、年度ごとに予算とサービスが切り分けられていることが一般的です。「ONE CAREER CLOUD」では年度で区切っていないため、25年卒のクチコミ評価や評点が高かった場合、26年卒採用でも一歩リードした状態から始めることができます。
※3 各大学もしくは大学院を卒業するユーザーの、卒業する学生総数に対するシェア率(2023年12月末時点の実績)
ほかには「クチコミ」を重視していることから、学生の本音がわかる点も企業から評価されています。たとえば説明会後に企業がアンケートを取っても、その場で否定的な意見はなかなか書けませんよね。第三者である「ONE CAREER CLOUD」を活用することで学生の本音を知り、自社の採用活動の改善につなげていくことができます。
導入利用社数は2,900社を突破し(※4)、5月にはスカウト機能の利用社数も1,000社を超えました。2023年にローンチした採用管理システムのベータ版では、求人とスカウト機能をご利用いただくと採用管理システムを無料で使用できるプランもあるため(※5)、求人・スカウト機能・採用管理システムをフル活用して採用に成功している企業が出始めています。
※4 2023年12月時点
※5 2024年7月時点
―― 2026年卒に向けてはどのような点をアップデートしているのでしょうか。
まずは検索機能の強化ですね。自社に合いそうな学生を個別に狙ってアタックしたいと考える中小企業だけでなく、職種別採用を行っている大企業からも「大学でこういった研究をしている学生だけにピンポイントでアプローチしたい」といったニーズがありました。そのため「出身高校」「インターンシップに参加した企業名」「大学での研究内容」といった細かい粒度で検索をかけられるようにしました。
新卒採用サービスを展開する企業の中でも、当社のスカウト機能は承諾率が高いというデータが出ています。登録企業を踏まえると、学生さんに届くスカウトがまだ飽和していないために承諾率が高いとも考えられますが、スカウト機能については今後もさらに注力していくつもりです。また、26卒では初回限定で、求人掲載・スカウト・採用管理機能がセットでお得に使える「究極プラン」をご用意しています。
さらに、職種などの特化サービスも積極的に展開していきます。争奪戦が過熱しているエンジニア向けの「ONE CAREER for Engineer」や外資系企業を目指す優秀な学生向けの「ONE CAREER for 外資」、人材紹介型の「ワンキャリア新卒紹介」など、各社の困りごとに対してピンポイントでお応えしていきたいと思っています。
企業データ
社名 | 株式会社ワンキャリア |
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本社所在地 | 〒150-0043 東京都渋谷区桜丘町20-1 渋谷インフォスタワー16階 |
事業内容 | キャリアデータプラットフォーム事業(採用DX支援サービス、その他) |
設立 | 2015年8月 |
代表者名 | 代表取締役社長 執行役員CEO 宮下 尚之 |