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インタビュー
株式会社リクルート 就職みらい研究所 所長の栗田貴祥氏
株式会社リクルート 新卒Division 営業統括部長の大貫聡一郎氏に聞く

企業に求められる学生との深いコミュニケーション
価値観について対話し、キャリア形成に並走する

少子高齢化が進展する中で、年々高まっている採用活動の難易度。学生の価値観は多様化し、企業は多様なニーズへの対応を迫られている。株式会社リクルート 就職みらい研究所 所長の栗田貴祥氏と、「リクナビ」を運営する株式会社リクルート 新卒Division 営業統括部長の大貫聡一郎氏に、新卒採用の最新動向と、2026年卒採用に向けて企業が何をすべきかを聞いた。

「安定」の多様化で大企業志望が増加

―― 2025年卒採用はどのような特徴がありましたか。

栗田:企業の採用意欲については、構造的な人手不足の中、引き続き堅調に推移しています。リクルートワークス研究所の「大卒求人倍率調査(2025年卒)」によると、従業員規模別で見ても、すべての規模の企業で求人総数が増加しました。結果、求人倍率は1.75倍と、昨年から0.04ポイント上昇しました。

ただし、従業員300人未満の企業では求人倍率が6.5倍と高い水準となった一方で、従業員5000人以上の企業では、求人倍率は0.34倍と低く、昨年度よりも0.07ポイント下落しています。これは、求人数の増加分以上に大手企業を志望する学生が増えたことを意味します。そのため学生に追い風が吹いている状況と言っても、大手企業ばかりを志望した学生の中には、なかなか思うような結果が出なかったケースもありました。

―― 大手企業への志望が高まっている理由をどう捉えればいいのでしょうか。

栗田:年功序列や終身雇用のシステムが崩れつつあり、入社しても確実なリターンが約束されないといった社会の不確実性が高まる中で、安定や働きやすさが望まれるようになってきていると考えられます。

ただしここで言う安定とは「企業そのものの安定」「給与の高さ」だけを指すのではありません。「ライフステージに合わせた柔軟な働き方」や「将来自分の力だけで生きていくことができるスキルが身につく」などの学生が求める“安定”です。現在は「仕事が人生の全てではない」とする価値観が広がっています。自分が大切にしたい価値観を実現できる持続可能な働き方ができる企業はどこかと考えたとき、大手企業を選択する学生が増えてきているのです。

ベンチャー企業が注目されていた時期においても、学生の多くは安定志向でした。安定を望むのは何も学生だけでなく、人間としての性分とも言えます。ですから学生の気質ががらりと変わってきているのではなく、安定・安全・安心の担保の仕方が多様になってきたと見るのがいいでしょう。

―― 採用に成功した企業は、どのような取り組みを行っていたのでしょうか。

栗田:企業の打ち手が多岐にわたっているので、一概に「こうすれば成功する」と示すことはできませんが、学生一人ひとりに向き合い、コミュニケーションを取っている企業が成果を出している傾向にあります。いまは学生に追い風が吹くがゆえに、学生が「自分はどういう人間か」「本当は何がしたいのか」といった内省を深めきれないまま選考に臨み、内定を得てしまうケースも発生しているようです。

複数社から内定をもらったとき、自分の軸が定まっていなければ、どのような基準で入社先を決めればいいかのかがわからなくなります。すると両親や友人から「そんなところで大丈夫なの?」「そんな会社は聞いたことがない」などと言われるだけで、心が揺れてしまうのです。そうなると、企業は内定を出した学生がたとえその場では「入社します」と言っていたとしても、「今後内定辞退してしまうかもしれない」といった不安がぬぐえず、採用活動を終えることができなくなります。

そのため、企業に求められるのは、学生と深いコミュニケーションを取ることでしょう。学生と一緒に「これからの人生をどう歩んでいきたいのか」「そのためにはどのようなファーストキャリアを選べばいいのか」を考え、選択の基準を共有する。そうすれば、仮に親や友人からの言葉で心が揺れたとしても、「あなたが当社を選んだ基準はこういうところだったよね」などと対話することができ、内定辞退防止につながります。

そのようなコミュニケーションを取っている企業は、学生にとっても好印象ですよね。学生が別の企業を選んだ場合でも、その後転職を考え出したときに「そういえばあの会社はすごく自分と向き合ってくれたな」などと想起してもらえる可能性が高いでしょう。

株式会社リクルート 就職みらい研究所 所長 栗田貴祥氏 photo

26卒では早期採用が加速する

―― 2026年卒の学生の動きはどうなると予測されますか。

栗田:学生優位な状況が続く中で、企業にとって採用充足の難易度はさらに高まると思われます。また、2024年卒では、平均就職活動期間は7.87ヵ月と、2023年卒に比べて半月ほど短くなりました。「いい学生がいれば早く内定を出したい」と考える企業は多く、就職活動の早期化はさらに進むでしょう。早期化する中で短期化している一因として、これまで政府が要請する「選考開始は6月1日以降」というスケジュールを守ってきた大手企業が、昨今の競争の激化により6月1日より前に選考を開始し、内定を出すケースが増加傾向にあることが挙げられます。そうなると学生も、「意中の大手企業から内定をもらえるのであれば、もう就活を終えてしまおう」と考えるようになります。

―― そのような環境の中で、企業はどういったことを認識しておく必要があるのでしょうか。

栗田:インターンシップ等のキャリア形成支援プログラムを活用し、学生にその企業や職場のことを理解してもらうことが、益々重要になってきていると思います。

2025年卒ではインターンシップ等のキャリア形成支援プログラムへの参加割合が84.7%と非常に高く、学生にとってはもはやインターンシップ等のキャリア形成支援プログラムへの参加はマストとも言える状況です。学生に就職先となり得る選択肢を広く知ってもらうためにはオープン・カンパニーが非常に有効ですし、さらに自身の能力がその職務で通用するかどうか、その職場に馴染めるかどうかなど、深く知ってもらうためには、実務体験が必須とされるインターンシップの実施が効果的でしょう。

営業担当が伴走し、企業と学生のマッチ度を高めていく「リクナビ」

―― 「リクナビ」に対して、企業や学生からはどのようなニーズが寄せられているのでしょうか。

大貫:企業からはシンプルで効率的・効果的な学生とのコミュニケーションが可能であること、学生からは自身を言語化して企業と接点をつくっていくことへのニーズを強く感じています。そのようなニーズも踏まえながら、「出会いをもっとシンプルに、決めるをもっとインタラクティブに。」とのコンセプトのもとで「リクナビ」をブラッシュアップし、磨き続けています。

―― 2026年卒に向けては、どのような点を磨かれたのでしょうか。

大貫:学生の強みや経験、価値観の言語化・可視化をさらに支援すべく、2025年卒向けの「リクナビ2025」から、スキルや経験項目の登録機能を用意し、タップするだけで「PRポイント」を登録できる機能を追加しました。この機能を「リクナビ2026」でも継続しています。学生は「学業について」「学生時代の経験」「資格」「スキル」「希望勤務地域」「仕事に対する価値観」「志望志向」の、七つのカテゴリーにわかれた具体的な項目の中から、自分に当てはまるものを選ぶことで、自分自身を深く表現するだけでなく、企業とのマッチ度を測ることができます。

PRポイントが詳細に設定されていれば、企業もその学生の特徴に合わせたアプローチがしやすくなりますし、学生も「なぜこの企業が自分に関心を持ったのか」が理解しやすくなりますよね。実際にマッチ度が高いほど企業から送られたスカウトやDMの開封率が高く、内定承諾率も高いとのデータがあります。

ほかに学生に関しては、「ジョブ・職種をもっと詳しく知りたい」「自分に適したインターンシップを知りたい」といったニーズも高まっています。たとえば単に「営業職種を100人募集します」とだけ示すより、営業スタイルや配属エリア、働き方などをしっかりと明示したほうが、より学生に関心を持ってもらえることは明らかです。そこで2026年卒に向けては学生が選びやすく、企業からすればより選ばれやすくする点にこだわり、ジョブ・職種やインターンシップの解像度を上げていく支援にも注力しています。

具体的には、当社の営業から「あなたの会社の仕事内容からすると、こんなふうに切り分けたほうが学生さんに伝わりやすいですよ」「もう少し仕事の解像度を上げていきましょう」といった提案・対話をしています。営業がお客さまの荷物を一緒に背負わせていただき、伴走していく形です。実際にそのような対話を行ったことで、「リクナビ2026」のプレサイトでは、インターンシップの掲載数が前年比132%増と、大幅に増加しています。

株式会社リクルート 新卒Division 営業統括部長 大貫聡一郎氏 photo

―― 採用活動に挑む企業に向けて、メッセージをお願いします。

栗田:人手不足が深刻化し、採用においても個人の力が強くなっている中で、従来と同じような画一的なあり方で対応しようとしても、学生はもう振り向いてくれません。企業が学生一人ひとりと向き合い、お互いの希望をすり合わせながらベターな選択肢をチョイスしていくことが、結果的にお互いの成長につながっていくでしょう。また、「学生の本分は学業にある」点も忘れてはいけません。大学でしっかりと学ぶことが、企業に入ってからの育成コストの削減や人材の活躍にもつながるはずです。「学び」と「働く」を接続していけるような採用活動を展開してほしいと思います。

大貫:採用の難易度は年々高まっていると感じています。もはや一部の大手企業を除き、「求人を掲載すれば応募が殺到する」状態ではありません。企業は学生から選ばれるために何が必要なのかをしっかりと理解したうえで、採用コミュニケーションを設計していく必要があります。私たちは「リクナビ」を通して、企業に対してはその魅力が学生に伝わるように、学生に対しては自己理解を促進し、企業とのよりよい出会いのきっかけをつくれるよう並走していきたいと思います。

企業データ

社名 株式会社リクルート
本社所在地 〒100-6640 
東京都千代田区丸の内1-9-2グラントウキョウサウスタワー
事業内容 日本国内のHR・販促事業及びグローバル斡旋・販促事業
設立 2012年10月1日
代表者名 代表取締役社長 北村吉弘

会社情報

企画・編集:『日本の人事部』編集部

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