新卒事業本部 領域企画統括部 メディア企画部 大西哲朗マネジャーに聞く
売り手市場化、新スケジュールなど変化する環境に対応
早期の自社認知促進で新卒採用を支援する「リクナビ」
企業の採用意欲の高まりによる需給バランスの変化、大幅に繰り下げられた採用スケジュールの影響……。2016年卒の新卒採用は、業種・規模を問わず多くの企業にとって、楽観視できない状況と言える。2017年卒の採用戦線も同様だ。激変する採用環境に対応し、インターンシップを含む取り組みを積極的に支援しているのが、株式会社リクルートキャリアが運営する就職サイト「リクナビ」だ。採用戦線の傾向を同社就職みらい研究所の岡崎仁美所長に、「リクナビ」の特徴をメディア企画部の大西哲朗マネジャーに聞いた。 (取材日/2015年6月24日)
「需給バランスの変化」と「新スケジュール」
―― 2016年卒の新卒採用市場の動きについて、どう分析されていますか。
岡崎 今年の傾向として挙げられるのは、まず「求人倍率の高さ」です。「第32回ワークス大卒求人倍率調査」(リクルートワークス研究所)によると、2016年卒の求人倍率は「1.73」。2000年代の平均「1.3」と比較すると相当に高い水準と言えます。実数では、就職希望者約42万人に対して、求人総数は約72万人です。求人のほうが30万人も多いわけですから、需給バランスで見れば、相当な「売り手市場」と言えるかも知れません。
この求人倍率の「業種別の差」が大きくなっているのも昨今の特徴です。人材不足感が特に強いのは建設業、流通業など。求人倍率はいずれも6倍を超えています。建設業は、東日本大震災後の復興需要に加え、2020年の東京五輪に向けてのニーズが高いため、この需給ギャップは当面続きそうです。流通業も、世界的に好景気だったリーマン・ショック前の水準に戻しつつあります。流通業の採用は景気動向に非常に敏感です。内需が拡大しつつある中で「店舗で働く仕事」のニーズが急速に増えていることがわかります。この業界の求人が増えると、全体の求人倍率も一気に高くなるという構造があります。
逆に金融業界は求人倍率が低く、0.23倍です。採用されるのは単純計算で、希望者5人のうち一人です。しかし実際の採用場面においては、決して楽ではなく、優秀な人材の争奪戦は激しく、さらに地方での人材確保にもかなり苦労されていると伺います。
従業員数の規模別データで見ると、従業員数300人未満の企業が求人倍率を押し上げています。好況時には中途採用での人材確保が難しくなるため、あわせて新卒採用も実施したいという中小企業が増えます。2016年卒の採用予定数では、300人未満の企業だけで40万人もの採用予定が出ており、採用総数の半分以上のシェアです。
―― 採用スケジュールにも大きな変動がありました。
経団連の指針が「3月広報開始、8月選考開始」となり、2015年卒と比べると時期が大幅に繰り下がりました。よく報道では「短期決戦」と表現されますが、企業はむしろ「長期化」と捉えています。弊社「就職みらい研究所」の『就職白書2015』の調査でも、約半数の企業が、新しいスケジュールの影響で「採用活動はむしろ長くなりそう」と回答しています。
これは、4割以上の企業が最終的に採用できる人数が「減りそうだ」と回答していることと大きく関係しています。2016年卒では、約6割の企業で母集団が減ると見ており、また自社への応募も減ると考える企業は約7割に達しています。さらに内定辞退も約6割の企業が増えると予想しています。多くの企業が採用戦線の厳しさを感じていることから、充足できなかった場合は秋以降も活動を続けないとといけない、という意味での長期化が考えられます。
こうした新スケジュールの影響を予測していた企業は、インターンシップなど自社認知促進活動に力を入れていました。広報開始自体は3月に繰り下がりましたが、インターンシップのスタートは例年と同じく3年生の夏頃からです。仮に4年生の卒業間際まで採用活動を続けるとなれば、1学年への認知形成から内定出しまでに1年半近くかかることになります。このあたりも「新スケジュール=長期化」と捉えられている一つの理由ではないでしょうか。
インターンシップ実施企業が多数派に。早期化する企業の動き
―― 採用環境の変化に企業側はどう対応されているのでしょうか。
新スケジュールの影響として、長期化とともに、広報開始と説明会開催が同時期になったことがあります。従来は、広報開始から説明会開催がピークを迎える2月まで数ヵ月の余裕がありました。学生は、この期間を利用して企業研究を進め、同業他社や関連業界など、当初の志望企業以外の多くの企業を研究していました。ところが、広報開始が3月となった今年は、説明会がほぼ同時に始まってしまいます。学生は最初にエントリーした企業の採用プロセスを優先するため、結果的に多くの企業が学生に知られるチャンスを失っています。
そこで企業が取り組んだのが「早期の認知促進」です。『就職白書2015』で、2016年卒でここを強化したいと回答した企業は43.2%ありました。認知促進の手段として行いたいものとして、最も多かったのが「インターンシップの活用」です。2016年卒の学生に対しては、採用予定企業のうち、インターンシップを実施した企業が55.5%と、初めて多数派になりました。大きな転機の年だったと言えると思います。
ただ、インターンシップが新卒採用の「決め手」になるかというと、まだそこまでは言えないと思います。『就職白書2015』で2015年卒学生のインターンシップへの参加状況を調査していますが、インターンシップに参加した学生のうち、「インターンシップに参加した企業に入社した」人の割合は14.8%です。同じ業界の違う会社に入社した学生も含めると約4割になりますが、逆に言えば約6割の学生がまったく別の企業、業界に決めているわけです。企業を対象とした調査でも、53.6%がインターンシップ参加者に内定を出せなかったと回答しています。
とはいえ、学生の企業理解、業界理解が確実に深まるチャンスであることは間違いありません。特に、学生にあまり人気がない業界や知られていない職種については、業界全体で取り組むことで、参加者の口コミなどによる波及効果が期待できると思います。今後、インターンシップに参加する学生は着実に増えますので、近い将来その認知形成効果は無視できないものになると思われます。
―― 学生側の動きにはどのような傾向が見られますか。
やはり広報開始と説明会の開催が同時期に重なったことによって、一人当たりのエントリー社数は確実に少なくなっています。ただ、過去の例を見ても、求人倍率が高い時期には学生のエントリー数は必ず落ちていましたので、これはむしろ需給バランスの影響のほうが大きいかもしれません。
8月までは、大手企業を本命とする学生は「様子見」という状況でしょうか。全体の内定率は6月下旬の段階で約3割です。ここまでに内定を出しているのは、中堅・中小企業なので、もともとそれらの企業を狙っていた学生以外は、まだ大手に可能性を残しながら活動を継続している状態です。
また、3月の広報開始と同時に就活をスタートさせたものの、まだ志望業界の絞り込みなどが進んでいない層の存在もあります。合同説明会などでも、方向性が定まってないのでどのブースに行けばいいのかわからない、と戸惑っているような学生ですね。以前のスケジュールなら、じっくり業界・企業研究を進めながら説明会の時期を迎えるという流れでよかったのですが、今年はもう説明会が本格的にスタートしています。このままだと企業との出合いの機会を逃してしまうことにもなりかねません。採用意欲の高い企業とこうした学生のマッチングの場をつくることも、弊社の大きな役割と考えています。
人工知能(AI)による高精度の企業情報の表示を実現した「リクナビ」
―― 「リクナビ2016」の特色についてお教えいただけますでしょうか。
大西 「リクナビ2016」では約1年前にインターンシップを紹介するサイトとしてオープンした時から一貫して、学生が自分の未来や進路について考える活動を支援することを考えて、さまざまなサービスを提供してきました。3月の広報開始以降も、エントリースタートから説明会開催までの時間が短い中で、「学生と企業の出合い」を効率化するためのシステムに注力しています。
そうした「リクナビ2016」の特色の一つが人工知能(AI)による「企業情報の表示」です。弊社が長年蓄積したビッグデータを解析し、「こういう行動パターンの学生は、次にどう動けば就活が成功するのか」という観点から情報提示を行っています。さらに今年は、その表示精度を上げるための新たなロジックも導入しました。業界や規模といった目に見える要素だけでなく、学生が各企業のどのようなところに興味を持ったのかのイメージをAIで推測し、似たような傾向や特徴を持つ別の企業を表示できるようにバージョンアップしました。これによって、学生のアクション率は平均1.6倍になっています。
もう一つは、昨年から採用した「オープンエントリーシート」です。就活に伴う「作業」をできるだけ効率化し、本来大切な業界研究や自己分析に時間をあててほしいという考え方からスタートしたものです。初年度は約3000社の企業の利用がありましたが、2年目の今年は、スタート段階ですでに5000社の導入が決まっています。企業側からも、文字のクセや書式のフォーマットに左右されずに純粋に内容で比較できると評価する声を多数いただいています。
―― 2017年卒採用に向けての「リクナビ2017」ではどのような構想をお持ちでしょうか。
まずインターンシップに関する情報をさらに強化したいと考えています。学生への調査では、「知らない業界を体験してみたい」という意見が非常に多くなっています。従来は一部の極めて積極的な学生が参加するものというイメージだったインターンシップのすそ野は、現在、急速に広がりつつあります。また、企業側もかつては体力のある有名企業がインターンシップを実施している印象でしたが、導入企業が50%を超え、その点も大きく変わってきています。学生がビジネスの現場で、働くことを体感できる場は、就活の中でさらに重要なものになっていくと思いますし、弊社もそれを支援していきたいと思っています。
同様の就職活動準備期間向けサービスでは、「すごい社会人LIVE」というリアルイベントにもご注目いただきたいところです。第一線で活躍している先輩の講演を直接聴くことで、「知らなかった企業にもこんな面白い仕事があるのか」「こんな先輩と一緒に働いてみたい」といった発見ができるイベントです。
この他、母集団から各企業がターゲットとする学生がどのくらい応募してきたか、各段階での歩留まりはどうか、といった状況をタイムリーに可視化する画期的なBIツールを「リクナビ2017」に実装する計画も進めています。好況下での採用は企業にとっても久しぶりですし、スケジュールの変化などで思わぬ課題が浮き彫りになることもあると思います。「リクナビ」の蓄積されたノウハウと、弊社営業担当のサポートをぜひご活用いただきたいと思っています。
バックナンバー/2018年卒採用インタビュー
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企業データ
社名 | 株式会社 リクルートキャリア |
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本社所在地 | 〒100-6623 東京都千代田区丸の内1-9-2グラントウキョウノースタワー |
事業内容 |
社員募集領域における人材採用広告事業/斡旋事業/選考支援事業 [厚生労働大臣許可番号 13-ユ-010258] |
設立 | 1977年11月28日(商号変更2012年10月1日) |
代表者名 | 代表取締役社長 柳川 昌紀 |