メディアサービス事業本部 メディアプロデュース統括部 新卒プロダクトマネジメント1部 松浦太郎部長に聞く
選考とインターンシップ活動が並行する「2track化」が進むなか、
企業と学生とのより質の高い接点づくり、コミュニケーション構築を支援する「リクナビ」
2019年卒の新卒採用は、2018年卒の採用活動と同じスケジュールになった。大卒求人倍率は1.88。依然として売り手市場が続いており、多くの企業は採用の質・量を確保するのが困難であったといえる。こうした状況下、企業の人事・採用担当者は2020年卒の採用活動をどう進めていけばいいのか。2019年卒採用マーケットの動向と今後の展望について株式会社リクルートキャリア就職みらい研究所の増本 全所長に、また、同社が運営する業界最大級の就職サイト「リクナビ」の特徴、最新のサービスを新卒プロダクトマネジメント1部松浦太郎部長に聞いた。
3月にピークが集中。4月以降は採用に関する学生の行動量が低下
―― 企業による2019年卒採用の動きは、どのようなものだったのでしょうか。
増本: 求人倍率は1.88。去年が1.78でしたから0.1ポイント増加しました。7年連続の上昇です。1.6以上は売り手市場と言われており、2015年卒の採用からずっと続いています。しかし、企業の規模別に見ると構造は異なります。300人未満の企業は求人倍率を大きく押し上げました。9.91という数値は、過去最高値です。9人の採用枠に学生が1人しか集まらない計算になりますので、採用に窮する現状がうかがえます。一方、5000人以上の大企業は少しずつ下降していて、0.37と過去最低でした。3人の採用枠に10人の応募があるわけですから、数字上は企業が有利な状況と言えます。業種別で見ると、金融業などと比べて流通業・建設業は苦戦しており、大きな隔たりがあります。
採用スケジュールは、前年と変わっていません。企業も学生も前年の結果を踏まえて、どこを改善すべきか考えて活動していました。それでも当該学年の採用活動と並行して、企業はその次の年に就活を控える学生向けに、インターンシップも実施しています。つまり、2track化している状況です。採用人事の業務負荷が増えるなか、企業の働き方改革の文脈で、いかに採用の生産性を上げていくかが大きな課題となっています。
内定率では、二つの特徴があります。一つは、内定出しが早いタイミングに推移したこと。前年同期と比べても、特に4~6月は6~8ポイント高い割合で内定が出ていました。その結果、6月1日時点では7割近い内定率となりました。もう一つは、7月度の内定率を見たときに、女性が前年同期と比較して2.7ポイントもマイナスになっていたこと。これは、メガバンクの一般事務職を中心とした採用抑制の影響といえます。
―― では、学生の活動状況をどのように分析されていますか。
増本: 2019年卒採用では、インターンシップの参加割合が大きく伸びました。これまで一般化していたインターンシップが大衆化し、行くのが当たり前になったように感じます。学生一人あたりの参加者数は4.41社でした。一方、採用に関する活動量は軒並み前年を下回りました。面接に行く回数も、エントリーシートを出す数も前年より減りました。求人数・求人企業数は増えていますが、学生の行動量が減少したため、企業からすれば学生との接触がより難しかったといえます。
行動量が減少した理由は、二つ挙げられます。一つ目は、エントリーも説明会も面接も、開始のピークが3月であったこと。一気にすべてが始まったので、限られた時間と労力のなかで対応せざるを得ませんでした。二つ目は内定出しのタイミング。例えば第3志望群の企業から早い時期に内定をもらえれば、その後の就活は、第1と第2志望だけに選考を絞れたのです。特に300人未満の企業はあおりを受け、学生と接点を持てる機械が限られたようです。
企業に5月時点で内定を出した人数を聞くと、前年よりも多いことがわかりました。それに伴って、辞退率も増えました。「採用計画を充足できたか」については、約半数が「できていない」と回答。「質・量の不満がどれくらいあるか」という質問への回答は「不満」が3割を占めていました。一方、学生に就職満足度を聞いたところ、8割が「満足」と答えていました。その割合は年々上がってきています。第1志望群に内定をもらった学生が多かったからだと推測されます。
―― 企業は学生とどのように接触していたのでしょうか。
増本: 7割の企業が、インターンシップの参加者に対して「何かしらアプローチしている」と回答しています。説明会の案内をしたり、課題を出したり、社員との懇談会に招いたりして、3月からの採用活動の開始に向けて関係を維持しているのです。また、選考の段階では、電話やメールを通じて選考会への参加を呼びかけていました。まめに連絡を取り、都合が悪ければ日程をずらしてでも選考するなど、学生と会うことにパワーを割いていたようです。内定者フォローについては、内定者懇親会や社員との面談、交流会など、人を接点とする取り組みが増えました。対面による機会の方が、学生の意欲も高まるようです。
―― 総括すると、2019年卒採用活動のキーワードとは何でしょうか。
増本: 学生で言うと、「まっしぐら就活」です。3月から7月の短期間のなかで走り切る就活でした。一方、企業側は「2track化による効率的な新卒採用の限界」。採用に関わるマンパワーが大きな課題となりました。
インターンシップが大衆化。より価値のあるプログラム設計が課題に
―― 2020年卒採用のトレンドをお聞かせください。
増本: 「前年より採用数を増やすかどうか」を企業に聞くと、どの規模でも「増やす」という回答が多くなっています。四分の一の企業は「未定」としたものの、2020年卒は今年以上に採用難になりそうです。
企業としてはまず、インターンシップの重要性をより一層認識しなければなりません。学生はインターンシップに平均4.41社参加しており、企業も7割が実施しているわけです。すると相場観ができてきて、学生からは「こういうインターンシップには参加したくない」という声も聞こえてきます。加えて、当初は就職先の候補だった企業でも、インターンシップに参加したことで、その意欲がなくなった学生が3割前後います。その理由の多くは、インターンシップの内容に納得できなかったからです。
では、どのようなプログラムを設計すべきかというと、学生にとって「価値ある」就業体験の場であることが大切だと考えています。お勧めしたいのは、一人ひとりへのフィードバックです。フィードバックがあるインターンシップは、約4割も就職意向度が上がりやすいことが分かっています。フィードバックは学生が自分を内省したり、企業を理解したりするための動機付けにつながっているようです。
―― 学生の志向に変化は見られますか。
増本: 近年は学生の志向が少し変わってきています。例えば、安定志向。もともと高いのですが、さらに高くなりました。また、リスクを回避する向きも際立ってきました。一方で、今の学生は平成不況を知っているので、「一生同じ会社にいる」よりも、「どの会社に行っても通用する能力を身に付けたい」と考えているという調査結果も出ています。人生100年時代を迎え、これまでの終身雇用や年功序列で報いる流れから、企業が個人のキャリアや成長を支援し、個人はより成長することで会社や社会に貢献していく方向へと大きく変わってきているようです。
学生に提案したいのは「働く基準と選択肢」を持つことです。自分が働きやすい会社、持ち味を発揮できる会社を選ぶには、基準がなければなりません。しかし、学生は働いたことがないので、基準を設けることはなかなか難しいでしょう。やりたいことさえ、分からないかもしれない。そこで活用してほしいのが、インターンシップやOBOG訪問です。社会やビジネスモデルを知り、会社の考え方・理念に触れることで、自分なりの選択肢、基準を確立できると思います。
学生の企業理解、自己発見を促すプロジェクトを推進
―― 2020年卒採用における貴社のコンセプト、ポリシーを教えてください。
松浦: これまで就活の本番は、採用活動が開始し、リクナビ本サイトもオープンする3月以降でした。しかし現状では、3月まで待っていては、企業も学生も動きが遅すぎます。より重要性が増しているのは、それ以前の準備期間です。当社でも、インターンシップやOB・OG訪問イベントなど、就活の準備を支援する商品やサービスを強化しています。
―― 新しいサービスには、どのようなものがありますか。
松浦: まずは、「社会のトビラプロジェクト」です。インターンシップに参加する学生一人ひとりに必ずフィードバックを行う企業を、見つけやすいように掲載しています。インターンシップで社会人から客観的なフィードバックをもらうことで、学生は企業への理解度が深まるだけでなく、それまで気付かなかった自分自身の強みや関心を認識できるようです。まさに、「働く基準と選択肢」の発見につながると考えています。
次に、「まるっとOBOG訪問」というイベントです。会場に数多くの社会人を招き、学生は興味のある業界・職種で働いている社員に話を聞けます。企業が主催する説明会ではないため、学生が選考を意識せずに疑問に思うことを素直にぶつけられるのが特徴です。
増本: OBOG訪問は、仕事内容や社風を理解するのに役立つと感じる学生が多い。にもかかわらず、実際に機会を利用している割合は四分の一にも達しません。「先輩がいない」とか「アポを取るのが大変、怖い」といった理由からです。
松浦: その機会損失を補うのが、「まるっとOBOG訪問」の目的でもあります。あとは、チャットを用いた相談サービスの拡大です。どれだけ就活の情報があふれていようと、何から手をつければよいのか悩む学生は少なくありません。対面での相談が苦手な学生もいます。そこで、チャットで気軽に相談できる仕組みを作りました。専属のアドバイザーが、どんなに些細な就活の悩みにもお答えします。
―― 企業と学生の接点づくりを、どのように支援されていますか。
松浦: 昨年から実施している動画サービス「リクナビキャスト」は当初、本サイト期間中のサービスとして考えていましたが、最近はインターンシップの様子を見せる企業が増えました。写真や文字の情報よりもリアルに雰囲気が分かるため、学生はインターンシップの効果をより深く理解し、参加の意欲も上がるようです。
また、スカウトサービス「リクナビスカウト」も進化します。これは、企業が学生からのオープンエントリーシート情報を閲覧し、自社で活躍が期待できそうな学生に個別のメッセージを送れるサービスです。スカウトは基本的に、企業側が「会いたい」と意思表示するものですが、学生の行動ログをもとに企業への興味度を測れる仕組みを構築しました。それにより、自社に好意を持ってくれている学生が「今日の10人」という形でリストアップされ、相思相愛の関係をより多く生み出せるようにしています。ぜひ、有効に活用してください。
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企業データ
社名 | 株式会社 リクルートキャリア |
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本社所在地 | 〒100-6623 東京都千代田区丸の内1-9-2グラントウキョウノースタワー |
事業内容 |
社員募集領域における人材採用広告事業/斡旋事業/選考支援事業 [厚生労働大臣許可番号 13-ユ-010258] |
設立 | 1977年11月28日(商号変更2012年10月1日) |
代表者名 | 代表取締役社長 柳川 昌紀 |