商品本部 新卒メディアプロデュース統括部 メディア企画1部 松浦太郎部長に聞く
内定取得の構造が変わるなか、
就職/採用活動を全力でサポートする「リクナビ」
企業と学生との相互理解の進化に挑む
選考開始時期が2ヵ月繰り上がり、6月となった2017年卒の新卒採用。スケジュールが圧縮された上に、前年未充足の企業が多かったこともあり、早い時期から活発な動きが見られた。2018年卒の採用市場も、状況は大きく変わらないと予想される。そうした環境下にあって、質・量ともに圧倒的な存在感を誇っているのが、株式会社リクルートキャリアが運営する就職サイト「リクナビ」だ。新卒採用市場の動向を同社就職みらい研究所の岡崎仁美所長に、「リクナビ」の特色をメディア企画1部の松浦太郎部長に聞いた。
(取材日/2016年8月24日)
企業にとって一段と厳しい採用環境に
――2017年卒の新卒採用市場の傾向を、どのように分析されていますか。
岡崎:今年も企業の求人意欲は依然高く、採用活動も活発でした。垂直立上げと言えるようなスタートダッシュを見せた企業もあります。また、内定獲得がスムーズに進み、「重複内定」の傾向が一段と顕著になっています。その結果、選考解禁から1ヵ月後の7月1日時点で2/3の学生が進路を確定したことなどがポイントとして挙げられます。
「第33回ワークス大卒求人倍率調査」(リクルートワークス研究所)によると、2017年卒の求人倍率は「1.74」と前年の「1.73」とほぼ同水準でした。実数では、求人総数は73.4万人、就職希望者数42.2万人となっています。求人倍率が微増にもかかわらず、企業の採用活動が過熱化したのは、2016年卒採用で未充足の企業が半数を超えていたからです。この求人倍率は、民間企業の採用予定総数を、民間企業就職希望者数で割ったものです。その割り算の分子にあたる採用予定数だけを比較すると2017年卒の求人総数は+2.1%の微増なのですが、2016年卒の実際の採用人数と比較すると+16.2%と大きく増加することになります。企業が採用活動に投下する予算やマンパワーを設計する場合、一般的には前年の採用予定数ではなく、採用実績数をベースにします。「昨年採用できなかったから、今年はしっかりと採用しなくては」と考えた企業が多く、求人倍率の伸び以上に企業の採用活動が活発になりました。
従業員の規模別では、従業員数5,000人以上の超大手企業だけが求人倍率が1倍以下、つまり求人数を上回る就職希望者があった一方で、300人未満の中小企業では4倍を超えるなど、規模による倍率差が前年より拡大傾向にあります。中小企業の求人倍率は、リーマンショック前は8倍を超えていましたので、その頃に比べれば需給バランスは緩和されているのですが、採用現場の採用難は非常に深刻な状況にあるという印象です。業種別となるとさらに差が拡大しています。流通業、建設業はいずれも6倍以上であるのに対し、サービス・情報業は約0.5倍、金融業は約0.2倍と学生にとって狭き門です。
―― 採用スケジュールが圧縮され、学生・企業ともかなり忙しかったようです。
岡崎:今年の学生の動きは、「まっしぐら就活」と言えるようなものでした。特に3月・4月は忙しかったと聞きます。企業へのプレエントリーを始めると同時に、個別企業の説明会参加やエントリーシート提出も重なりました。就職活動のスタート段階の学生はよく「視野を広げましょう」というアドバイスを受けるのですが、今年の学生と話をしていると「その方がいいのはわかるけれど、物理的に時間がない」という切実な声もありました。
企業側も、2年連続のスケジュール変更にアジャストするのが精一杯だった、という声がありました。そんななかで各社が特に強化したのが、早期の認知拡大活動です。インターンシップ実施企業もかなり増えました。広報開始の時点で学生にとって知らない業界・企業と位置づけられてしまうと、その後に知ってもらう機会をつくりにくいと判断したようです。
内定取得は「分散型」から再び「集中型」へ
―― 2017年卒採用における、就職内定に関する状況を聞かせてください。
岡崎:2017年卒学生の就職内定率は、5月から6月中旬までの約6週間で大きく伸び、7月1日時点で71.1%となりました。2016年卒採用は4月から8月にかけて内定取得が分散したのですが、2017年卒では以前の「一定期間集中型」に回帰したと言えます。これは、学生と企業のマッチングの構造が再び変わったということです。2017年卒の就職・採用活動スケジュールは「2016年卒版のマイナーチェンジ」と言われていました。確かに2016年卒からの「大手が後」という構造自体は変わっていませんが、2016年卒とはまた違った構造に変化した感があります。
属性別にも、いくつか特徴が見られます。第一に、文系・理系別ではもともと理系先行で進む傾向があったのですが、2016年卒ではその差がなくなりました。そして2017年卒では再び6月中旬の時点で10ポイント程度の差がつきました。2016年卒では、理系学生が8月の採用選考解禁後まで就職活動を終えることができず、卒業研究や修士論文に支障をきたしたのではないか、という声がありました。これらを受けて今年は「早めに推薦を出す」という教授も多かったと聞いており、その影響ではないかと見ています。男女差は年々小さくなっており、2017年卒ではほぼ見られません。これは言うまでもなく女性活躍推進の流れによるものでしょう。女子学生の意識がずいぶん変わってきたな、と実感することもしばしばです。
さらに、スケジュール変更がもたらした構造変化の結果として注目したいのが、「重複内定」の傾向です。これまで、複数社の内定を取得している学生の割合は多くて50%前後だったのですが、2017年卒採用では7月1日時点で57.3%まで高まっています。「大手が後」という構造変化が起きたため、1社目の内定をもらっても、就職活動を続ける学生がぐっと増えました。一方で、進路確定率は大手企業の選考が解禁となった6月1日から7月にかけて急激に高まり、7月1日時点で64.3%となっています。学生が昨年よりも早く進路を確定できたという意味では、2017年卒のマイナーチェンジ=選考開始の繰り上げは一定の効果があったと言えます。
早期の自社認知促進ニーズが一段と高まる
――「リクナビ2017」のコンセプト、特色について教えていただけますでしょうか。
松浦:サイトのコンセプトは、一貫しています。リクルート創業時の想いである、「学生が、自分に最もふさわしく、自分を伸ばすことができる企業を選び、企業は明日の繁栄を担う人材を求める。この二つを両立させていくために企業と学生間のコミュニケーションを十分に成立させていくこと」を引き継いでいます。「リクナビ2017」でも、そうした想いを持って取り組んできました。
「リクナビ2017」の特色を挙げると、まずはインターンシップに関する情報をさらに強化したことです。今やインターンシップを実施する企業は50%を超えているというデータもあるほど、採用活動の中で重要な存在になりつつあります。弊社としても、しっかりと支援していきたいと考えています。また、ユーザーインターフェースも変更しました。かなりスマートになったと好評です。使いやすさを進化させたという点では、システムの安定運用のための投資も行いました。2017年卒の就職活動は採用広報期間である3月からの3ヵ月間の情報収集が一層重要になるとみて今まで以上に安全・安心に使ってもらうことを重視しました。もう一点、力をいれたのが掲載企業社数です。これだけ圧縮スケジュールになってくると、最初から企業の求人を幅広く見せることが重要だと判断しました。そのため、「リクナビ」だけでなく中堅・中小・ベンチャー企業向けのマッチング支援サイト「リクナビダイレクト」も強化して、約2万4000社もの企業の情報を提供することができました。掲載企業数では「リクナビ2017」はNo.1です。(※2016年3月31日時点 主要就職サイト比較)
―― 2018年卒採用は、どんな動きになりそうですか。
岡崎:2017年卒採用並に、学生を採用したいという企業は多いと予想されます。求人倍率も、堅調に推移していくのではないでしょうか。今のところ、採用スケジュールは、2017年卒を踏襲すると言われています。そうしたなかで、この秋以降もインターンシップに力を入れる企業が増えるのは間違いないでしょう。また、大手企業を中心に手法の多様化、複線化が一層進む兆しも見えています。具体的には、人材紹介会社の活用や逆求人の導入、採用直結型インターンシップなどです。社員の人脈を生かす「リファラル・リクルーティング」も徐々に広がってきています。
採用・就職決定への伴走者として新たな試みに挑む
――「リクナビ2018」では、どのような取り組みをお考えですか。
松浦:「リクナビ2018」のチャレンジ・テーマは、三つあります。一つ目は、「企業と学生の相互理解」です。企業が働くことの実態を学生に伝え、学生は自分の志向やスタイルに関する理解を深めることで、ミスマッチを解消できると考えています。二つ目は、「フィット感」です。ポイントになってくるのは、豊富な企業数の中からいかにフィット感の高い接点を生み出せるかということです。学生一人ひとりのOpenES情報を閲覧し、自社で活躍できそうな学生に個別のメッセージを送信する「リクナビスカウト」を、新たなサービスとして立ち上げます。そして、三つ目は「負担の軽減」です。インターフェースの進化、スマホ・アプリの進化、OpenESの活用などを引き続き強化しつつ、情報の充実はもちろん、さまざまな新たな機能の開発にも取り組んでいきたいと考えています。
もとより、リクナビが何十年と継承してきた、採用におけるコミュニケーション・エンジニアリングの骨格は、今後も大きくは変わらないでしょう。ただ、新しいテクノロジーを取り入れることには、もっとチャレンジしていくべきです。それを続けていくことが、採用成功につながると思っています。新しいことには難題がつきものですが、ビッグデータの活用など、企業の皆さまと一緒に取り組んでいきたいと考えています。
バックナンバー/2018年卒採用インタビュー
バックナンバー/2016年卒採用インタビュー
バックナンバー/2015年卒採用インタビュー
バックナンバー/2014年卒採用インタビュー
バックナンバー/2013年卒採用インタビュー
バックナンバー/2012年卒採用インタビュー
企業データ
社名 | 株式会社 リクルートキャリア |
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本社所在地 | 〒100-6623 東京都千代田区丸の内1-9-2グラントウキョウノースタワー |
事業内容 |
社員募集領域における人材採用広告事業/斡旋事業/選考支援事業 [厚生労働大臣許可番号 13-ユ-010258] |
設立 | 1977年11月28日(商号変更2012年10月1日) |
代表者名 | 代表取締役社長 柳川 昌紀 |