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インタビュー
株式会社リクルートHR本部 新卒Division ディビジョン長 大家純一氏、
株式会社リクルート 就職みらい研究所 所長 増本全氏に聞く

就職・採用活動をシンプルに。
進化する「リクナビ」で、候補者との対話時間を増やす

コロナ禍での2回目の活動となった、2022年卒新卒採用。多くの企業は、2021年卒の経験や他社の成功事例などを生かし、計画に沿って選考を進めることができたようだ。2023年卒採用はどうなるのか、「リクナビ」を運営する株式会社リクルートの大家氏と増本氏に、新卒採用の最新動向と新商品・サービスについてうかがった。

オンライン活用の広がり、対面との使い分けにより、緊急事態宣言下でも選考がスムーズに

―― まず、2022年卒採用の振り返りからお聞かせください。

株式会社リクルート 就職みらい研究所 所長 増本全さん photo

増本:2022年卒の求人倍率は1.50倍と前年同水準で、企業の採用意向は底堅いと言えます。従業員規模別に見ると、「300人未満」の企業では求人倍率が上昇しましたが、志望者が増えた「5000人以上」の企業は低下しました。学生からすると難易度が高く感じられたと思います。

新型コロナウイルスの感染拡大が新卒採用に影響を与えた影響も調査していますが、約7割は「採用数は変更していない」と回答しました。業種別に見るとばらつきがあり、特に飲食店・宿泊業は「減らす」ところが多く、大きな影響を受けています。

学生がどう動いたのかを、各月1日時点での内定率の推移で見てみると、4月までは2021年卒の水準、5月以降は売り手市場と言われた2020年卒の水準に近づいて来ています。前年の緊急事態宣言以降のような選考の遅延は見られず、企業の計画通りに進んでいたと言えます。

―― 2022年卒も、昨年と同じく緊急事態宣言下での採用活動でしたが、なぜ選考が順調に進んだのでしょうか。

増本:一つは、オンラインを活用する企業の裾野が広がったからです。2021年卒でオンラインを活用したのは、大手企業や大都市圏の企業が高い傾向した。2022年卒には、中小企業や地方の企業でも、オンラインを活用する動きがより広がりました。

もう一つは、オンラインと対面の使い分けが進んだからです。1次面接では「Webのみで実施」し、動機付けや見極めをしたい最終面接を「対面のみで実施」するなど、選考タイミングでコミュニケーションの手法を使い分けることで、スケジュール通りに選考を進められたのだと思います。

オンライン化の流れは、さまざまなプロセスでみられます。「合同企業説明会」や「個別説明会」、「面接」は、いずれもWebで実施する割合が増えています。特に個別説明会は顕著で、学生も「Webの方がよい」という割合が高くなっています。

―― 学生の情報収集源では、何か変化がありますか。

増本:依然として「ホームページ」「就職情報サイト」が最も活用されていますが、SNSや動画配信サービス、逆求人型のスカウトサービスの活用も増えています。前年と比べて、使っているという回答がいずれも10ポイント前後アップしています。実際、LINEやTwitterで他の就活者の経験に基づいた情報を収集したり、他者に相談を持ち掛けたりする学生が多数います。企業側も、候補者体験に力を入れていかないと、マイナスの心象が一気に広がりかねないので、丁寧な対応が望まれます。

オンライン化でも学生と企業のマッチング精度を上げる、対話と情報開示の重要性

―― 2023年卒採用の見通しは、いかがですか。

増本:採用数については、約7割の企業が2022年卒並みと回答しており、底堅いといえます。また、「増やす」と回答した企業が「減らす」より2.6ポイント多く、少しポジティブです。

オンライン活用は、個別説明会や面接ではさらに増える見込みです。一方で、対面での実施も、「増える見込み」という回答が「減る見込み」よりも多くなっています。オンラインと対面の使い分けが、2023年卒採用ではより最適化されていくと思います。

インターンシップの実施方法も、変化しています。「Webのみ」での実施が13.0ポイント減り、「対面とWeb両方」が14.3ポイント増えています。インターンシップは、採用選考と比べてオンラインにプログラムを落とし込むことが難しく、「オンラインのみでは厳しい」と判断した企業が多かったようです。

―― 2023年卒ならではの動きはありますか。

大家:2023年卒の学生は、学業以外の活動にかなり制限を受け、部活動やアルバイト、留学などといった大学生ならではの経験が薄くなっている世代です。大学は、「『学生時代に一番頑張ったことは何ですか』という質問に、学生が答えにくいのではないか」と気にしています。企業としても、学生の魅力をどう見出すのか、マッチング精度を何で担保すればいいのかを新たに考えなくてはならず、双方にとって悩ましい問題が起きるのではと思っています。

―― 企業はどのような準備をすれば良いのでしょうか。

大家:面接で双方の理解度・納得度をどう深めていくか考える必要があるでしょう。コミュニケーションの量で解決するのか、質で解決するのか、もしくは量と質の両方か。各企業のスタイルに合わせた設計がより重要です。

増本:対話の中で、企業と学生がどこまで自分の情報を開示できるかも重要です。選考の場における学生からのアウトプットは、企業のリアリティある情報開示によって変えられる可能性があります。説明会で対話することで、面接で学生が話す志望動機やこれまでの経験も、より具体的な話に変わってくるでしょう。

また、今の大学生は学業にとても熱心です。授業やゼミでの学び方や問題意識の持ち方、それらのレベル観を聞くだけでも、十分に選考の材料になると思います。マッチングに必要な情報が引き出せるよう、企業側がきちんと問いを立てる必要があります。

「コスト」「時間」「心理的負荷」 三つの負を解消する採用サービスを拡充

―― 2023年卒採用に向けた、貴社の商品やサービスのコンセプトをお聞かせください。

大家:就職・採用活動はもう何十年も変わっておらず、企業にも学生にも圧倒的な「時間」と「コスト」の制約、「心理的な負荷」をもたらしています。その結果、両者が対話にいたるまでの工程があまりにも長く、負担も大きくなっています。この三つの“負”を新しいサービスで解消し、就職・採用活動をもっとシンプルにすることを目指しています。

―― 具体的には、どのようなサービス・取り組みを考えていらっしゃいますか。

株式会社リクルートHR本部 新卒Division ディビジョン長 大家純一さん photo

大家:一つ目は、Webでの合同説明会の拡充です。Webなら学生がいつでも気軽に企業を探し、興味を持った会社へすぐにアクションできます。移動にかかる時間やコストも軽減されます。時間を有効に使い、よりシンプルに企業と学生が出会える価値を創出します。

二つ目は、採用管理システム「riksak(リクサク)」による面談や面接調整の負担軽減です。シンプルかつスピーディーな応募者管理と面接日程調整により、企業と応募者が会うまでの工程を短縮します。導入社数を増やし、いずれは飲食店などの予約システムぐらい気軽に便利に面接調整ができるようにしたいと考えています。

三つ目は、企業によるダイレクトモデルの新構築です。従来のように学生から能動的に企業を探してもらい、エントリーを待つというだけでなく、たとえ受動的な学生であっても、双方が情報を知った上で、ダイレクトに会いにいけるような状態を創り出したいと構想中です。

―― これから2023年卒採用を本格化する企業にメッセージをお願いします。

増本:学生の求めるものや志向が変わる中、信頼を得るポイントは、二つあります。企業が自社を深く理解し、顧客や従業員が体験する価値を、実態とずれずに学生に伝えられるかどうか。そして、もう一つは会社の存在意義やビジョンと実態が言行一致した様子を学生に見せられるかどうか。ありのままの実態をきちんと語り、見せることができないと、学生が納得して自ら選択することはできないと言っていいでしょう。

大家:今、採用広報は見直すべきタイミングに来ています。メディアの活用法はもちろん、対面とオンラインの使い分けも多様化していますし、もっと言えば、働き方自体が大きく変わりつつあります。そうしたなかでリクナビは、現状の就職・採用活動における“負”を解消し、より多くの学生、大学、企業にシンプルに使いやすく、そして支持されるサービスを磨いていきます。

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企画・編集:『日本の人事部』編集部

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