株式会社ディスコ キャリタスリサーチ研究員 松本あゆみ氏に聞く
プレ期から学生に真摯に向き合い、企業理解と志望度を醸成する
学生に寄り添う就活を支援する「ディスコ」
2023年卒の新卒採用では、企業の採用意欲が高まったことを受けて、学生の内定率は早い時期から高くなった。一方、企業にとっては、内定辞退の増加によって採用数が確保できないなど、課題が残ったと言える。2024年卒新卒採用はどう動くべきなのか。キャリタス就活編集長 林茜氏とキャリタスリサーチ研究員 松本あゆみ氏に話を聞いた。
活動時期を早めたものの、企業にとっては厳しい採用戦線に
―― 2023年卒の新卒採用市場の動きをお聞かせください。
松本:コロナ禍で低下していた採用意欲は、回復基調が鮮明になりました。それに伴い、厳しい戦線を覚悟して採用活動に挑む企業が多く見られたことが特徴です。大学3年生の夏を狙ったインターンシップ開催が増えるなど、プレ期からの活動がかなり活発でした。その後も、参加した学生へのフォローや早期選考案内など、出会いをいかに採用に結び付けていくかに注力する企業が増えました。
結果的に、7月1日時点の内定率が84.9%と非常に高く、コロナ禍前の2020年卒採用を一貫して上回るペースで進捗しました。順調に就職活動を進めた学生が多かった一方、企業側の充足率は7月の調査時点で58.0%と前年よりも低い結果になっています。かなり早い時期から動き出したにもかかわらず、企業は予想以上に厳しい状況に置かれていて、8月以降も引き続き採用活動を行っている企業が大半です。ただし今期は充足が難しいと見込んでいる企業も少なくありません。
アンケートでは学生も企業も、今期の新卒採用が「売り手市場だ」と回答する比率が前年よりもかなり増えました。学生一人当たりの平均の内定社数は、この数年で最も高い2.5社。3社以上という学生も4割いて、前年よりも10ポイント近く増加しています。企業にとって、内定辞退は大きな課題といえます。
林:オンラインで情報を収集した後、早期に企業を絞り込んで選考に進み、十分な企業研究や志望度の醸成ができないまま内定を獲得した学生が多いように感じます。企業からすると、内定者のクロージングやフォローに関する課題が多かったのではないでしょうか。
―― 採用に失敗した企業と成功した企業に、それぞれ傾向はあるのでしょうか。
松本:わかりやすい傾向は見えづらくなっています。少し前までは、早く採用活動を始めれば成果も出やすかったのですが、今年は学生の志望意欲を醸成できないまま早期に内定を出して、結局は辞退されてしまう企業が多かったようです。
また、オンラインが中心になっているので、企業文化や社員の雰囲気などを理解してもらうことが難しくなっています。そういった状況でも、学生が「回数や時間を割いて説明してくれた」「接点は少なくても密度の濃い話ができた」など、自分自身に向き合う姿勢があると感じることができた企業は、学生からの志望度が高くなるようです。
林:インターンシップをどのように開催するかによっても、成否が分かれます。例えばオンラインで1日実施しただけでは、学生の気持ちをつなぎ止めておくことが難しい。複数のプログラムを用意して、ある時は会社の価値観だけを伝える、またある時は具体的な仕事内容を伝えるというように、どのタイミングで何を伝えるかをしっかりと設計した上でプロモーションしている企業のほうが、成功につながっていると思います。
―― 学生の価値観は、どう変化していますか。
松本:社会貢献に関心が高いことは変わらないと思います。また、リモートワークの制度があるなど、社会の変化に柔軟に対応している企業への人気が高いですね。人事制度そのものに魅力を感じるだけではなく、環境に合わせて変わっていこうとする企業の姿勢も見ているようです。
林:Z世代と呼ばれる今の学生は、デジタル&ソーシャルネイティブです。日頃の買い物でも、SNSで商品を認知し、口コミや店舗で評判を確認した上で、ネットで購入しています。そのプロセスは就職活動にも反映されていて、口コミを非常に重視しています。また、失敗したくないという意識が強いので、事前に面接で何を聞かれるのか、エントリーシートに何を書けばいいのか、内定をもらった人は面接でどう答えているのか、といったことを入念に調べています。
プレ期の活動が一段と活発化。志望意欲の醸成・維持が課題に
―― 2024年卒新卒採用の動向についてお聞かせください。
松本:7割強の企業が今期以上の採用数を予定しており、採用意欲が高まっています。それに伴って、企業の動きがさらに早まることが予想されます。アンケートでは、企業が注力したいこととして、「プレ期の活動強化」と「インターンシップの実施・強化」がトップに入りました。採用広報解禁前の動きが一段と活発化しそうです。
また、今期よりも「面接開始を早める」「内定出しの時期を早める」という回答が、それぞれ3割を超えています。今後のコロナの状況次第ではありますが、面接は、対面で実施する企業が増えそうです。オンライン面接だけでは、入社意欲や志望度の醸成が難しいと考えているのでしょう。インターンシップも部分的なものも含め、対面が増えると思います。
学生も3年生の夏から動き出すのが当たり前になってきました。プレ期から積極的に動いて、自分に合う企業を見つけようとしているのです。ただ、早期に企業を絞り込んでしまうのか、視野を広げてさまざまな企業を見比べるのかは、今後の動向を見て行く必要があると思います。2023年卒の先輩を見て就職環境が良さそうだという楽観的な見方が増えると、活動量が減る可能性もあります。
2024年卒の学生は、コロナ禍での行動規制が厳しく、1年生のときはほとんどキャンパスに行けませんでした。学生生活での経験の少なさが就活にも影響するのではないかと心配している学生が大勢います。不安を解消するために、他の学生や社員と積極的に交流を持ちたいと考える学生は多いようです。
林:学生のアクションとしては、昨年と比べて4月、5月のスタートダッシュが大きくなっているようです。インターンシップに関する情報(募集企業)を探し始めた時期は、大学3年生(修士1年生)の6月が30.2%と最多ですが、大学3年生(修士1年生)の5月が24.7%、大学3年生(修士1年生)の4月も22.5%と多く、学生の意識はかなり高まっていると感じます。
―― 学生の動きを踏まえて、企業は2024年卒採用でどう動けばいいのでしょうか。
松本:内定を複数獲得する学生がますます増えると思われるので、企業は学生と接するタイミングにおいて、志望意欲をしっかりと醸成していかなければなりません。
オンラインでは、組織や社員の雰囲気などがなかなか伝わりづらいものです。また、オンライン中心の大学生活では、学生は交友関係や経験が限定され、「働く」ことに関する価値観が偏りがちです。一方で、給与や勤務時間など可視化できる情報は、ウェブサイトなどに掲載され、学生も取得しやすい。そのため、条件面などわかりやすいところで判断してしまう傾向が見られます。
インターンシップを実施している企業は、仕事体験や社員との交流を通じて、学生が具体的に働くイメージを膨らませられるようにするとよいでしょう。働くことへの価値観を広げられる機会を与えることは、学生の成長にもつながります。条件面以外で、企業を選ぶ観点を示すことは、学生の関心をひくことにもつながると思います。
林:企業もさまざまな価値観を持って事業を展開しているはずです。自社の価値観をしっかりとアピールすることで学生の志望意欲を醸成し、内定承諾までつなげていくことが大切です。
学生ファーストの姿勢で、共感や新たな気付きを得るコンテンツを提供
―― 2024年卒採用に向けて展開している、貴社のサービスや商品のコンセプト、特徴をお聞かせください。
林:就職情報サイト「キャリタス就活」のコンセプトは、引き続き「学生に寄り添う」ことを基本にしています。スローガンも「あなたの『らしさ』に寄り添う就活を。」と掲げています。
学生ファーストの姿勢を商品・サービスに落とし込むうえで、ポイントは三つあります。一つ目は、学生に対する就職情報提供・個別相談の充実を図ること。コロナ禍で情報収集に苦戦する学生のために、「ONLINE就職ガイダンス」で最新の就活情報を生配信しています。また、「LINEで就活相談」では、LINEを使って、就活生が当社の就活アドバイザーへ気軽に相談できます。
二つ目は、多様な企業発見の軸を提供することです。たとえば「共感検索」という機能があり、学生が自分自身の価値観に合う、気になるキーワードをクリックすることで、今まで知らなかった企業を発見することができます。また、サステナブル企業特集を組み、SDGsなどに積極的に取り組んでいる優良企業を見つけることができるようになっています。加えて、「キャリタスMeet UP」という、学生の個性や経験などに興味を持った企業が集まる、招待型のイベントを開催しています。自分の価値観に合った企業に短い時間で効率的に出会うことができます。
三つ目は、選考対策に力を入れています。適性試験やデザイン思考テストを用いる企業が最近増えているので、それらを無料で受けられるキャンペーンを実施しています。さらに、先輩たちが実際に体験したインターンシップや本選考に関するクチコミ情報を公開するコンテンツもスタートさせました。
これらを通して、就活に関する学生の悩みに寄り添い、情報収集から企業発見、選考対策までを一貫して提供できるサービスを実現しています。
―― 今後の展開についてお聞かせください。
林:学生が求めるコンテンツをさらに拡充していくことで、より満足度の高いサービスにしていきたいですね。多くの学生の評価を得ることが、サイトを利用する企業が優秀な人材を見つけることにつながっていくと思います。
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企業データ
社名 | 株式会社ディスコ |
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本社所在地 | 〒112-0004 東京都文京区後楽2-5-1 飯田橋ファーストビル 9階 |
事業内容 |
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設立 | 1973年10月 |
代表者名 | 代表取締役社長 新留 正朗 |