株式会社ディスコ キャリタスリサーチ研究員 松本あゆみ氏に聞く
オンライン採用が定着する中、
「ディスコ」が提案する企業と学生の新しい出会いの形
新型コロナウイルスの感染拡大が続く中で進行した2022年卒の新卒採用。企業も学生も、オンラインでの活動に慣れ、そのメリットやデメリットがはっきりと見えてきた。この2年の経験を踏まえて、企業はどう動いていけば、2023年卒新卒採用を成功させることができるのか。キャリタス就活 編集長 鈴木一史氏とキャリタスリサーチ研究員 松本あゆみ氏にお話をうかがった。
採用活動の早期化とオンライン化が加速
―― 2022年卒の新卒採用市場の動きをお聞かせください。
松本:まず前提となる企業の採用意欲に関してですが、コロナの影響で大きく縮小した2021年卒採用と比較すると、回復基調が見られました。ただ、全体的に採用意欲は底堅いとはいえ、売り手市場とまでは言えません。優秀な人材を厳選して採用したいという傾向が強まってきた印象があります。学生も動き出しの時期からコロナ禍の影響を受けており、二極化がさらに進みました。大学の授業がオンライン化したことで、就職関連の情報があまり入って来なくなり動きが遅れた学生もいれば、危機感を募らせて早くから自主的に動き、活発に活動した学生もいました。
2021年3月以前のプレ期間は、多くの企業がインターンシップや1Day仕事研究などのプログラムを積極的に設けていました。特に増えたのはオンラインでの実施です。企業側にとっては、どうプログラムをオンライン化していくかが、新たな挑戦であったと言えます。さらに、採用意欲の高い業界・企業では、オンラインを通じて接点を持った学生を早期に選考する動きが強まりました。これに伴って企業からの内定出しも、超売り手市場と言われた2020年卒を上回るハイペースで進行しました。ただ、7月1日時点の内定率は、コロナ前の2020年度を下回りました。売り手市場が復活したというよりも、単純に選考の前倒し、早期化が進んでいたことがうかがえます。
―― 採用選考は、オンラインが完全に主流になった印象があります。
松本:内定するまで対面での接点が一切ないケースも少なからず見られました。企業には「オンラインだけの選考で本当に問題がないのか」という不安があったかと思いますが、それは学生も同様です。今年は内定辞退が増加しましたが、実際に会社に足を運ぶことなくオンラインだけで入社する会社を決めるのは心もとない、という思いが学生側にもあったのではないでしょうか。
―― 学生の就職観やキャリア観には変化はありましたか。
鈴木:「キャリタス就活」には、「共感検索」という機能があります。企業規模や地域、業界などは一切設定できず、企業が社会にどのような価値を提供しているのかを表したキーワードから、企業を探します。この検索機能の利用が、2021年卒と比べて10倍近くに増えました。
よくクリックされているのは、「SDGs」「人々の心の豊かさ」「非経済の発展」「誰もが幸せに暮らせる社会」「地球環境の保全」など、社会的意義に関するキーワードです。サスティナブルな事業展開をしっかりと伝えることで、学生から共感を得ている会社が人気を博しています。
「身に付く力から選ぶインターンシップ」も、学生の利用が格段に増えました。その名の通り、どのような能力を得られるかという視点でインターンシップを選ぶ機能です。学生は、選考に有利に働くかどうかだけでなく、自分の成長にどんなメリットがあるのかという視点でインターンシップを選ぶようになってきています。
―― その他に、貴社のサービスの利用状況から見える変化はありますか。
鈴木:企業側では、LINEを活用した採用ツールとして業界トップクラスのシェアを誇る「キャリタスContact」が、引き続き多く利用されています。学生とのつながりやコミュニケーションが足りていないと考えている企業は多いようです。
2023年卒新卒採用は、オンラインの課題をどの段階で解消するかが鍵
―― 2023年卒新卒採用の動向についてお聞かせください。
松本:6割の企業が2022年卒並みの採用数になると見込んでいますが、採用数を増やす企業が若干多いので、少し回復するのではないかと考えています。プレ期の活動や、優秀人材の早期採用については、大きな意識の変化はなく、2022年卒を踏襲する、あるいは強化する、という流れになりそうです。
また、オンラインの活用は続くと見ています。もともとは対面で会えないからという理由で利用されはじめましたが、企業にも学生にもメリットが多く、新型コロナウイルス感染症の流行状況にかかわらず、使われるでしょう。今後は、オンラインとリアルのメリット・デメリットを踏まえて、いかに戦略的に組み合わせて採用につなげていくかがポイントになってくると思います。
鈴木:オンラインだと「コストがかからない」「遠方の学生でも集めやすい」などのプラス面が多い一方で、「自社のことを伝えきれない」「採用の手触り感がない」といった課題がありますね。
―― オンライン化が進むことで、ほかに懸念されることはありますか。
鈴木:合同説明会が減ったことで、学生が知らない企業を発見する機会が減りました。そのため学生は、自分が行きたい業界以外の情報を知らないまま、就職活動を進めがちです。企業と学生との偶然の出会いが減ったことで、多くの企業が「自社を向いている学生だけで採用を閉じてしまっていいのか」「多様性を担保した人材採用ができているのか」という危機感を抱いています。
オンラインでは関係性が希薄になりがちですから、企業側は、一度はリアルの場で対面したいと考えています。企業は、選考から入社までのどのタイミングで対面の場を設け、オンラインのデメリットをカバーするかを、事前に考えておかないといけません。2023年卒採用に向けた計画を立てるうえで、大変重要なポイントだと思います。
学生との偶発的な出会い、深いコミュニケーションを支える新たな仕組み
―― 2023年卒採用に向けて展開している、貴社のサービスや商品をお聞かせください。
鈴木:一つは、「キャリタスMeet Up」です。企業は、オンライン化によって採用の手触りや肌触りが感じられず、学生を口説けないと感じています。一方、学生側では、自分の強みを理解してオファーしてもらいたい、という意向が高まっています。その両方のニーズを満たすために企画しました。Zoomを使った少人数のオンラインイベントで、招待された学生30名と、彼らの経験や個性を評価した企業数社という規模で開催します。イベントでは、企業側からの簡単なプレゼンに続いて、学生が興味のある企業に質問する、相互にコミュニケーションをとるコーナーを設置。学生に納得感のある企業のインターンシップへのエントリーを促していきます。
もう一つは、「LIVE Walk」という新しい形のイベントです。当社ではもともと、リアルの合同企業説明会を開催し、企業と学生との偶然の出会いを数多く演出してきました。しかしオンライン合同説明会では、それが難しい。そこで、学生がアバター(自分の分身となるキャラクター)を使って仮想空間にある各企業のブースを自由に回り、企業説明を聞く形式にしました。オンライン合同説明会という立てつけから、さらに進んだ企業体験ができるようなプラットフォームを提供していこうと考えています。
―― 「キャリタス就活」の位置付けをどうお考えですか。
鈴木:2023年卒採用向けのキャッチコピーは、「らしさに寄り添う就活を」です。時代の変遷と共に、学生の就職観・キャリア観も変わってきています。「キャリタス就活」は、学生一人ひとりに寄り添いながら、企業と学生がお互いをより知り合えるようなサービスを提供していきたいと考えています。2023年卒採用でも、それをしっかりと守っていきたいですね。
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企業データ
社名 | 株式会社ディスコ |
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本社所在地 | 〒112-0004 東京都文京区後楽2-5-1 飯田橋ファーストビル 9階 |
事業内容 |
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設立 | 1973年10月 |
代表者名 | 代表取締役社長 新留 正朗 |