オンライン化に対応しながら、
マッチング精度の向上と納得感のある採用支援を追求する「ディスコ」
新型コロナウイルスの感染拡大により、企業の採用活動に大きな変化が生じた、2021年卒の採用戦線。企業も学生も命運が分かれる結果となった。果たして2022年卒採用はどうなっていくのか。キャリタス就活編集長 鈴木一史氏とキャリタスリサーチ上席研究員 武井房子氏にお話をうかがった。
大手企業を中心に採用活動のオンライン化が進む
―― 2021年卒の採用市場では、企業と学生の動きそれぞれについてお聞かせください。
武井: 2月時点で企業に採用計画を聞いたのですが、まだ新型コロナウイルスの影響が出る前ということもあり、採用意欲はとても高かったですね。「採用数を増加する」という企業が目立ちました。また、夏にオリンピックの開催を控えていたので、その前に採用活動を落ち着かせたいというムードがあり、早くからインターンシップでの接点づくりもかなり活発に行われていました。参加した学生と密に連絡を取ることで、モチベーションを維持したまま就職活動に入ってもらおうと工夫する企業も多かったように思います。
3月以降は、コロナ禍で自粛ムードが広がり、採用市場にかなり影響が出ました。6割の企業が採用活動の中断を余儀なくされましたが、その期間は1~2ヵ月にも及んでいます。ただし規模別で見ると、大企業は過半数が中断していませんでした。採用活動のオンライン化がスムーズにできていたからです。実際、規模が大きい企業ほどWEBセミナーの実施に積極的でしたね。ここで対応が分かれた印象があります。
内定率の推移を見ると、3月・4月は例年を上回っていましたが、5月あたりから失速しはじめ、昨年・一昨年を割りました。8月の時点では83.7%で、前年同期実績を4.5ポイント下回りました。10月時点の内定率も8割台後半で、前年には及びませんでした。
鈴木: これまでの採用活動には「直接会って選考しなければいけない」という価値観がありましたが、それを強制的に打ち破らなくてはいけない環境になり、すぐにアクションできた企業と時間が掛かった企業とに分かれた感があります。学生も同様で、状況に対してアジャストできた学生とできなかった学生がいました。大きく変わる環境に、どれだけスピーディーに、またしっかりと対応することができたのか。その差が企業、学生ともに大きかったといえるでしょう。
――WEB選考に対する企業や学生の反応はいかがでしたか。
鈴木: WEBセミナーを実施した企業の6割が「コロナ収束後も利用したい」と回答しています。大企業ともなると、全国の学生と会い、採用するためのコストはかなりかかります。しかしオンライン化が進んだことで、全ての地域の学生に公平に機会を提供できるようになり、コストも大きく削減することができました。導入することに不安を感じていた企業も多かったようですが、結果的に大きなものを得ることができました。
一方、学生も8割超がWEB面接に好意的な姿勢を見せています。「交通費の負担が減った」「リラックスして面接に臨めた」など、好評の声が多く聞かれます。
武井: ただし、学生も本音としては「セミナーや一次面接はオンラインでもよいが、最終面接は対面で話したい」と思っています。画面だけで本当に自分の良さを感じ取ってもらえるのか、という不安があるからです。入社してから「イメージと違っていた」ということになると、学生も企業も困ります。お互いにミスマッチを懸念しているようです。
――就職活動に対する学生の納得度はいかがですか。
鈴木: 早めに内定を獲得した学生は、インターンシップの段階から接点をもっていたパターンが多いようです。そのため志望する業界や企業に行けたので、納得度は高かったのではないでしょうか。3月以降は就活環境が一転したため、思っていたように活動ができなくなったので、企業理解が不足しがちになった学生が多かったようで、納得度は下がっているのではないでしょうか。
武井: コロナ禍により志望する業界を変えざるを得なかった学生もいます。その時点で自分が納得できるところに決めたつもりでいても、あらためて考えてみると、もともと行きたかった業界や仕事ではなかったので、不安になっているケースもあると思います。入社するまでの数ヵ月間をフォローアップしていくことで、内定者の不安を和らげていかなければなりません。
――「キャリタスContact」や「身に付く力から選ぶインターンシップ」の利用状況はいかがでしたか。
鈴木: 「キャリタスContact」は、400社以上の企業にご契約いただきました。LINEを活用した採用ツールでは業界No.1のシェアだと思います。実際、インターンシップの時期から多くの企業が導入し、参加した学生とLINEで定期的にコミュニケーションをとっていました。利用されている企業の継続率は、約90%です。
学生がインターンシップを探す際に、「身につく力から企業を探すことができます。学生からの要望に応えて検索軸で高評価をいただいています。2021年卒学生は、夏秋のインターンシップでの接点が命運を分けたといえるでしょう。インターンシップをうまく利用できた学生は、順調に内定を得ることができました。かなりポジティブに活動していたと思われます。一方、意識がなかなか高まらなかった学生や、インターンシップへの動きが遅れてしまった学生は、結果として苦しい活動を強いられたといえます。
――2022年卒採用の見込みをお聞かせいただけますか。
武井: 企業に21卒の採用計画を聞いたところ、2月の時点では、「増加」と答えた企業が「減少」と答えた企業よりも多かったのですが、7月の時点ではこれが逆転し、「減少」という回答が「増加」の倍近くもの割合を占めました。この5ヵ月だけでも採用意欲はかなりダウンしています。同じタイミングで2022年卒の採用見込も聞いたところ、4割弱が「未定」と回答しています。先の見えないコロナ禍のなかで、「決まっていない」「見えない」という企業は多いようです。ただし、半数は今期並みの採用を予定しているようなので、減らす企業ばかりではありません。
鈴木: 「新卒採用を辞める」という企業は少ない印象があります。当社のサービスをご利用いただいている企業でも、「採用を完全に凍結する」というケースはそれほどありません。「昨年を超える人数を採用することはないが、厳選された人材を採用していこう」という気持ちが強いようです。まだまだ新卒者のニーズは根強いものがあると思います。
ただ、これまで10年近く続いていた過熱ぶりが一旦落ち着いたことは間違いありません。といっても、2000年にあった構造不況のように、まったく採用できないという状況にはならないでしょう。新卒を採用したくても10年近くうまくいかなかった企業もありましたが、そういうところにもやっとチャンスが巡ってきた、という状況ではないでしょうか。
超過熱感が和らぎ、厳選採用にシフト
―― 2022年卒採用において企業はどう動くべきでしょうか。
鈴木: 人事の方が経営層から求められることが三つあると思います。まずは、採用コストの見直し。次に、採用の厳選化も重要です。そして、ミスマッチをなくす、ということです。オンライン化を推進しながら、お互いが納得感を持った活動を行うことが重要です。
――マッチング精度を高める工夫が必要になってくるということですか。
鈴木: 就職戦線が厳しくなると、企業はこれまで会えなかったような学生に会うことができたりします。すると、自ずと採用の基準が高ぶれしがちになります。ただ、オーバースペックな人材を採っても意味がありません。価値観を含めて本当に合致した人材を採っていくことが大事です。
武井: 超売り手市場だと言われたときは、求める人材要件を設定しても、それに見合う学生を採ることが難しかった。事業計画に沿った採用人数を達成するために、どこまで基準を下げればいいのかという悩みが広がっていた時期もありました。今後は、設定した基準にある程度合致した学生を採れるようになっていくと思います。落ち着いて採用活動ができる環境になったといえます。
鈴木: 今の学生は、就職情報にキャッチアップできている人と、そうでない人とに二極化しています。2022年卒採用では企業も瞬間的でなく、長い目で学生を見てあげて欲しいと思います。遅れている学生がいれば、フォローアップすることも大事です。
武井: オンラインでのインターンシップが増えていますが、学生にどれだけ伝わっているのかが心配です。オンラインだとどうしても業界理解・企業理解を得にくいことを念頭に置きながら実施されると、理解が進むと思います。
――学生はどう動くべきですか。
鈴木: 多くの学生が不安を感じていると思います。しかし実際には、好きな業界や企業へ簡単に入れるほど甘くはありませんが、それほど心配しなくても良いと思います。ここ数年は売り手市場だったのが、ある程度は厳選化されるようになっていく。ということです。視野を広く持って、早めに活動の準備をすることが大切です。
企業と学生の高い納得度を得られる仕組み作りを目指す
―― 2022年卒採用に向けた貴社の商品・特徴をお聞かせください。
鈴木: ポイントは二つあります。オンラインへのシフトと個別の学生に向けたスカウトです。今までリアルで行っていた合同企業説明会はほぼオンラインで開催し、学生が全国から参加できるようになります。対面とオンラインをセットにしたハイブリッド型の開催も検討中です。また、学生のプロフィールをベースに、企業がインターンシップに呼び込む「特別スカウト」という機能を、プレサービスの時期から利用できるように実装しています。
――企業や学生にとって、「キャリタス就活」はどんな位置付けでありたいとお考えですか。
鈴木: 時代は今、大きく動いています。企業側が集めて採る時代から、相互に判断してマッチングしていく時代へと変っていきています。マッチングというのは、学生と企業がフラットな立場でお互いを認めつつ、お互いの良いところを発見していくこととだと思います。
就職サイトはこれまで企業や学生を集めることに注力してきました。しかしこれからは、マッチングをいかにしてもらうかを準備するプラットフォームにならなければいけません。
キャリタスとしても、その役割を担っていきたい。企業と学生がお互いに知り合える場を細かく作っていきたいと思います。
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企業データ
社名 | 株式会社ディスコ |
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本社所在地 | 〒112-0004 東京都文京区後楽2-5-1 飯田橋ファーストビル 9階 |
事業内容 |
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設立 | 1973年10月1日 |
代表者名 | 代表取締役社長 新留 正朗 |