株式会社学情 Web事業推進部 チームリーダー 課長 澤井 則明氏に聞く
年々厳しさを増す新卒採用の解決策として「20代通年採用」を提案
One to Oneでのコミュニケーション機能も強化する「あさがくナビ」
2019年卒の採用は18年卒と同様に、3月1日広報開始、6月1日選考開始というスケジュールで行われたが、実質的には、かなり前倒しであったと言わざるを得ない。4月までに多くの学生が内々定を獲得していた、という声もある。2020年卒採用も同一日程ではあるが、多くの企業が従来通りでは成果を出すのは難しいと見込んでいる。経団連が就活ルールの廃止を表明するなど、将来的にはさらに波乱が起きると考えられる新卒採用市場。企業は今後、どのように採用活動を展開していけばいいのか。「あさがくナビ」の運営責任者である執行役員の乾 真一朗氏と、Web事業推進部・課長の澤井 則明氏に聞いた。
選考開始のピークが3月、4月に。早期決着を目指す企業が増加
―― 2019年卒の採用市場に対して、どんな印象をお持ちですか。
澤井:企業にとっては、大変厳しい状況でした。一方の学生側は自己分析を行わなくても内定をもらえるような状況だったので、企業の選り好みが進んだ感があります。そういうこともあり、ミスマッチがより顕在化しました。
乾:インターンシップはかなり盛り上がりました。実施企業の割合は56.5%で、前年と比べて17.9ポイントも増えています。3月で学生とコミュニケーションをスタートしたのでは間に合わないと考えた多くの企業が、冬休み中にインターンシップを実施。それに比例して、参加する学生もかなり増えました。
―― エントリーシートの提出状況はどうですか。
乾:提出数は減りました。採用広報の解禁は3月ですが、エントリーシートの締め切りを3月末にするなど、早めに設定する企業が増加したからです。期間が限られていたため、提出先を絞らざるを得なかった学生は多かったようです。
―― イベントへの参加状況はいかがですか。
澤井:2月までのインターンシップのイベントに多くの学生が来場した半面、3月に行われたスタートアップイベントの集客は少なくなった印象があります。2月の時点で学生はどこにエントリーシートを出すのか、ある程度絞り込んでいます。3月1日から企業を探すのではなく、2月中に調べた企業にエントリーをして次のステップに進む、という動きが目立ちました。
―― 内定率の推移はいかがですか。
乾:昨年と比べると、高めに推移しています。6月が選考解禁なので、本来なら内定率は6月以降に高まってくるはずですが、4月ぐらいからかなり高い内定率が見られました。6月選考解禁は有名無実化しているといえるでしょう。実際、内々定出しの開始時期のピークは6月ではなく4月でした。
それほど早く内定が出ていると聞くと、辞退者も多いのではないか、と考えるかもしれません。しかし、今年の学生には「決めない、辞めない」という特徴があります。この傾向は昨年と比べても顕著でした。早めに内定をもらっていた学生でも、他に良い企業が採用活動をしていると聞くとそれにも応募する、という動きが夏休み中まで続いていました。大学のキャリアセンターの方に話を聞いても、今年は「複数の内々定企業のうち、どれを選べば良いか」という相談が多かったそうです。
―― 内定者に対する企業のフォローはどうなっていたのでしょうか。
乾:いろいろとアンケートを取ってみると、それほど奇手があるわけではなく、通常通り懇親会を開いたり、内定者だけのSNSを立ち上げてコミュニケーションを取らせたりしているのがメインでした。人とのつながりを意識させる取り組みが多かったといえます。
従来通りでは成功しない。チャレンジする姿勢が問われる
―― 2020年卒採用の動きはどうなりそうですか。
乾:新卒採用市場は、より過熱するはずです。一方で今年と変わらず、インターンシップ期間からの接触・アプローチが広がっていくことは間違いありません。恐らく採用広報解禁は変わらないので、短期間で勝負を決める点も同様でしょう。学生と企業のマッチングの課題がより浮き彫りになるのではないかと考えています。
澤井:6月の選考開始を基本的に遵守すると思いますが、今まで通りの日程や内容ではなく、いろいろと新しい採用手法を検討される企業が増えるのではないでしょうか。
乾:売り手市場がより顕著になる中、2018卒でも2019卒でもうまくいかなかった、という企業が増えています。たとえ何かを行っても、急にうまくいくような見通しもありません。それなら、採用市場を広げようというアイデアがあってもいいと思います。20代は1250万人もいます。今まで見ていなかったそういう層をターゲットにするのです。新卒ではない層にも、将来有望な人材がきっといるはずです。
―― そのほかにも、企業へのアドバイスはありますか。
乾:学生は大手志向が強いので、中小企業は、大手とは違う魅力を打ち出していかなければなりません。しかし、会社として制度が整っていることをアピールするのはいいけれど、全ての会社がそうではありません。では、何が大事になってくるかと言うと、自分が求められているかどうか、ということなど。これからの新卒採用では、中途採用のように「あなたのこういった点を魅力として感じてオファーしました」と一つひとつ丁寧に接することによって、学生の反応も変わってくると思います。
―― 学生に関してはいかがですか。
乾:インターンシップにどんどん参加してほしいですね。3月1日からスタートするのであれば、今からでは出遅れ感があります。また、本当に行きたい企業に行けるのはほんの一握りであることは、売手市場でも変わりません。短期決戦であるからこそ、広い視野を持って活動することが重要です。
澤井:Webの情報をうまく活用することはもちろんですが、自分の足を使った情報収集も大切にしてほしいですね。OB・OG訪問も、今は行いやすくなっています。自分でも情報を集めて、最終的にどうするかを決めると良いと思います。
既卒・第二新卒を含め、20代通年採用をスタンダードに
―― 2020年卒採用に向けた、貴社の展開をお聞かせください。
澤井:「20代通年採用をスタンダードに」と提案していきます。新卒採用の限界が見えてきており、制度疲労していると考えているからです。実際、18歳人口は減ってきていて、もはや、年に1回の新卒採用では取り切れなくなっています。当社は「あさがくナビ」とは別に、20代に特化した「Re就活」というサイトも運営しています。メインは「あさがくナビ」での新卒で、状況によっては既卒・第二新卒も狙っていこう、という考え方です。
サイトのコンセプトは、引き続き「隠れた優良企業が発見できる就職情報サイト」です。これだけ情報量が増えている中、いくら隠れた魅力があっても、学生に気付いてもらえなければ意味がありません。企業は待つだけではなく、学生に働きかけていく、仕掛けていく。そんな勝ちパターンを形成するための仕組みをご提供していきたいと考えています。
―― 新しいサービスには、どんなものがありますか。
澤井:「ダイレクトリクルーティングサービス」を強化していきます。具体的には、昨年リリースした「スカウト機能」を活用して攻めの採用を行う、というものです。中途採用でスカウト機能はおなじみですが、新卒では各社ともあまり利用していません。「Re就活」で効果が出ている機能を「あさがくナビ」にも展開していこうというのが、システム開発の大きなポイントです。スカウト機能を活用することで、サイトの使い方が変わると思います。学生には、マイページを充実させることをお勧めしたいですね。学生時代に力を入れたことを「ガクチカ」といいますが、マイページに「ガクチカ」情報を入力することで、スカウトの数が増やせます。
乾:弊社では「就職博」という、採用に至る確率がかなり高いイベントを毎年開催しています。なぜそれほどの成果が出せるかというと、One to Oneだからです。数を追う採用でなく、マッチングを追う採用だということです。このモデルをWebにも応用したいと考えています。
澤井:学生のサイト内での行動履歴、例えばどういう企業・業界に興味を持っているのか、直近ログイン、プレエントリーなどの行動履歴をもとに活動中のアクティブなユーザーへアプローチすることが可能です。これらを活用すれば、不特定多数に送るのではなく、自社の採用要件に合った学生を抽出できるはずです。
―― イベント関連で新しい取り組みはありますか。
乾:イベントとWebの連動を強化していきます。実は、2020年卒採用のイベントから、会場内で学生がどのように行動したのか、どの企業を訪問したのかを全て把握できるようにしました。そのデータをイベントでのプレエントリーの状況と合わせて、AIが分析・解析。企業側から学生にアプローチする際の一つの材料として使えるようになりました。
当社は朝日新聞と提携し、就活ニュースペーパーという形で学生向けに最近の時事問題をかみ砕いて説明しています。それもうまく活用して、自分がどこに興味があるのかを分析してもらえるとうれしいですね。また、ミレニアル世代はスマホを使いこなしているので、遠方などの理由で企業訪問が難しい地方の学生のために、スマホで面談できる「スマ面」も導入しました。企業・学生の双方に役立つサービスを、これからもご提供していきたいと考えています。
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企業データ
社名 | 株式会社学情 |
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本社所在地 |
〒530-0001 大阪府大阪市北区梅田2-5-10 学情梅田コンパス |
事業内容 | 就職情報事業、 広告事業 |
設立 | 1977年11月7日 |
代表者名 | 代表取締役社長 中井 清和 |