自分軸に基づく身の丈にあった企業選びを支援
レコメンド機能の活用を意図し新機軸を打ち出す「あさがくナビ」
企業間の競争が激化するなか、優秀な若手人材を確保するために、各社とも新卒採用に意欲的に取り組んでいる。採用広報解禁が3月1日になって今年で2年目。各企業とも前年度の経験を踏まえて採用活動をスタートしたが、選考解禁日が6月1日へと2ヵ月繰り上げになった余波は予想以上に大きかったようだ。選考開始を早める傾向が顕著となり、学生も企業理解を深められぬまま大手企業や有名企業にエントリーしてしまっている。そのような状況下、中堅・中小・ベンチャー企業は2017年卒、さらには2018年卒の採用でどうすれば成功することができるのか。それらの企業の採用支援に特化する「あさがくナビ(朝日学情ナビ)」の高畑広基ゼネラルマネージャーに、新卒採用活動の現状と採用成功に向けた戦略、同サイトの方向性などについて、詳しいお話をうかがった。(取材日/2016年8月8日)
選考解禁2ヵ月前倒しが何をもたらしたか
―― まずは、2017年度新卒採用活動をどのように分析されていますか。
学生や企業の動きがかなり前倒しになったという印象です。正直なところ予想以上でした。これは経団連が「採用選考に関する指針」を改訂し、選考活動を8月1日から2ヵ月繰り上げ、6月1日に変更したことが大きな要因です。データを見ても明らかで、7月中旬の段階の内定状況調査では、私立文系の内々定率は87.2%と対前年度比15.7ポイントのアップ、関東エリアの私立上位校に限定すれば内々定率は90.0%にも達し、21.7ポイントも伸びています。また、国公立文系でも17.8ポイントのアップという状況です。「あさがくナビ」へのアクセス数からも早期化がうかがえます。6月上旬から7月上旬にかけては、昨年と比較すると約1.2倍。急激な増加といえます。
学生の大手志向が一層顕著になってきている点も、2017年度新卒採用の特徴です。大手企業が新卒採用に積極的である上に、スケジュールが短い分、企業選びの軸を確立できないままの学生が多く、「大手企業・有名企業である」という安心感にひかれてしまっているようです。自ずと中堅・中小・ベンチャー企業は苦戦を強いられており、採用目標をクリアするためには、採用活動により一層力を入れなくてはならない状況になっています。狙い所となってくるのは、企業から内々定は得たがまだ納得していない層です。実際、弊社が主催する合同説明会「就職博」の来場者数は、昨年より約20%ほど増加するなど順調に推移しています。「自分に合った企業だという確信を持てない」「より良い条件の企業を探したい」といった学生が主体的に動いているようです。「あさがくナビ」としても、そうした学生との接点を作っていくことが重要であると考えています。
―― 企業の採用動向はいかがでしょうか。
引き続き、企業の採用意欲は非常に高いといえます。例年以上にインターン熱が高まっているのもその一例です。既に2018年卒採用に向けて、昨年以上に夏のインターンシップ受け入れの引き合いがありました。弊社では2015年5月に「あさがくナビ インターン・ジョブズ」というインターン専用サイトを立ちあげました。大手に限らず、中小・中堅・IT系のスタートアップ企業や外資系企業などに採用ツールや長期・有給のインターン情報サイトとして幅広くご利用いただいています。より優秀な学生と早い時点から接点を持ちたいという企業が多いだけに、インターンシップを重視する傾向は今後さらに強くなっていくと予想しています。
また、大手企業が早めに内々定を出すなか、惜しくも選考に漏れた学生を取り組もうと6月から7月をセカンドステージと位置づけ、新たな母集団形成に意欲的な企業が再募集を行っています。大学関係者からは、知名度が高い企業も夏採用、秋採用で大学のキャリアセンターを訪問しているという話を聞いています。著名企業とはいえ苦労しているところもあるというのが実態のようです。一方、中堅・中小・ベンチャー企業も採用活動の継続を余儀なくされている状況です。なかには、大手に先駆けて春先に内々定を出した企業もあったのですが、7月に入っても学生から内々定に対する承諾の連絡をもらえないままでいるなど悪戦苦闘が続いています。マンパワーが限られている中で、いかに効率よく採用活動を進めていくかが今後の鍵となってきます。
見切り発車的な選考。学生も大手志向が顕著に
―― 2017年卒の学生の動きはどうですか。詳しくお聞かせください。
スケジュールが短期化されたことで、学生はかなり混乱していました。実際、業界研究・企業研究の期間が短縮されたため、志望企業の絞り込みになかなか時間が取れず、中途半端になってしまった学生が多いようです。もちろん、なかにはいち早く準備に着手した学生もいましたが、アクセス状況や会員登録のピークを見ても前年とはあまり変わらず、3月に入ってからようやく一所懸命に動き出したというのが実情です。決して、ボリュームが前倒しになったわけではありませんでした。加えて、弊社は排除しているものの、大手就職サイトでは依然としてエントリー数を確保するために、一括エントリーの機能を促進しています。企業側では母集団を何とか形成できるものの、「セミナーへの参加率が低い」「実際に応募する気のない学生からの無駄なエントリーが目立つ」など、困惑もあったようです。
また、学生が厳選してエントリーしているという見方もできます。前年に比べて、一人あたりのエントリー企業数が若干落ち込んでいます。おかげで、エントリー数が多い人気企業とそうでない企業の「二極化」がより深まった感があります。業界研究・企業研究が十分にできなかった分、自分軸で企業をしっかりと探すところまで行けなかったのではと考えられます。それで、食品や商社といった特定企業にエントリーが集中してしまったようです。企業選びの軸ができていない状況でエントリーしているのですから、当然ながら「なぜこの会社を志望するのか」という理由、根拠は固まっていません。エントリーがあっても、求める形には至っていないのですが、企業側も見通しが立てにくく、「来ている中から、それなりの学生がいたら内々定を出そう」と見切り発車的に選考になだれ込んだといって良いでしょう。内々定までは短縮されましたが、今時点で2017年卒採用戦線が終わったわけではありません。この後も活動は続くと見ています。
企業と学生が互いを認識した上で出会う場を提供する「あさがくナビ」
―― 「あさがくナビ2017」のコンセプト、特色を教えてください。
「あさがくナビ」は、将来性のある中堅・中小・ベンチャー企業の新卒採用支援に特化した就職サイトです。規模や知名度、人気に左右されず、自分軸で会社を見つけていくためのサイトにしたいという想いを一貫して持ち続けています。採用成功の原則をベースとするさまざまな機能や朝日新聞との協業による充実したコンテンツは、学生や企業から高く評価されています。また、弊社の合同説明会「就職博」との連動も「あさがくナビ」の大きなアドバンテージです。このイベントは今や日本最大級の就活イベントと位置づけられており、ナビと組み合わせて活用することで高い効果を導いています。
「あさがくナビ2017」のコンセプトは、『好きと思える会社に行こう』です。自分が本当に行きたい会社を見つけてもらいたい、その手助けを「あさがくナビ」が担いますという位置付けにしています。
具体的には、企業と学生がお互いを認識した上で出会えるための機能やコンテンツをいくつか用意しています。新設したのは、「ブランディングページ」と「フォローするボタン」などです。「ブランディングページ」は参画企業の採用ブランドを学生にしっかりと伝えていく、完全オリジナルの企業PR画面です。採用ターゲットに見合った画面を構成していることもあって、「狙いに見合った学生からのエントリーが増えている」「回遊率が高まっている」など成果は上々です。採用担当者からは、「今まで自社の採用ブランドについて真剣に考えることがなかったが、良い機会になった」という声も聞かれます。
「フォローするボタン」は、すぐにエントリーするほどではないものの、気になる企業をフォローすることで、その企業がセミナーの受付を開始するなど、フォロー企業の最新情報を受け取ることができる機能です。ツィッターのフォローボタンに近いライトなつながりですが、フォローされた企業側も学生の個人情報は分からないものの、メールで直接アプローチすることができます。潜在層の母集団形成につながるとあって、こちらも企業から好評を得ています。
また、より進化したという点で、「AI(人工知能)による推奨型マッチングシステム」(パーソナライズレコメンデーション機能)についても触れておきたいと思います。2016年版から搭載している機能で、学生の行動履歴や志向性などを人工知能でリアルタイムに分析して、興味関心の関連性が高い企業を予測しレコメンド(推奨)しています。2017年版からは非会員であっても遷移がすべて保存される仕組みになるなど、データの蓄積量が大幅に増大しました。それに伴って、予測精度も一段と高まってきており、「レコメンドされた企業が思った以上に自分に向いていたので、エントリーしてみました」という学生の声が次々と届いています。全エントリーのうちの13%が人工知能レコメンドシステムからであるというデータもあり、一定の成果が出ていると評価しています。
人工知能を備えた『就活ロボ』を搭載しレコメンド機能を強化
―― 「あさがくナビ2018」では、どのような方向性をお考えですか。
「あさがくナビ2018」のコンセプトは、<みんなに「ちょうどいい」安心就活サイト>です。大手志向や一括エントリーなどに惑わされずに、ちょうどいい会社に出会える場を提供したい、安心して働ける企業が掲載されている就活サイトでありたいという私たちの想いを打ち出しています。「ちょうどいい」という言葉を用いた背景には、企業や学生が直面する二つの課題があります。一つは、情報過多による混乱です。大手就活サイトには2万社を超える企業が参画しています。しかも、一括エントリーというエントリーを誘発する仕組みまで用意されています。これでは、学生も自分の志向にあった企業を選ぶのは容易なことではありません。もう一つは、短期決戦による大手志向の深化です。スケジュールが短縮されたなか、自分軸が定まらないままに就活をしてしまい、大手企業以外にはエントリーシートを出さなかったという学生がかなりいました。結果的に一部の企業に人気が集中してしまい、スクリーニングの手間が相当掛かることになりました。
こうした就活に関するさまざまな問題を解決するために、弊社は「あさがくナビ2018」に『就活ロボ』を搭載・発進することを決めました。人工知能を備えた『就活ロボ』が学生一人ひとりに最適な企業を紹介し、就活を手助けする――。『就活ロボ』というキャラクターを通じて、従来からある人工知能レコメンドシステムも学生に役立つ機能として、さらなる認知が期待できます。既にシステムの効果は実証されているので、『就活ロボ』によりメリットを分かりやすく伝えることで、積極的に利用していただけると考えています。
その他のコンテンツにも『就活ロボ』を登場させて、『就活ロボ』が学生の就活をサポートすることを明確化させていきます。例えば、「大学別人気ランキング」という新しいコーナーを設けます。これは、投票形式の人気企業ランキングではありません。大学別に学生のエントリーコードや閲覧履歴を調査して人気のある企業をランキング形式で表示するというコンテンツ。「ちょうどいい」を実現するための機能になるのではと期待を寄せています。
さらには、弊社が得意とする「就職博」などのイベントでも『就活ロボ』をうまく活用していきたいですね。学生と企業が出会えるリアルな場で『就活ロボ』が、就職に関するアドバイスをしたら面白いのではないかとアイデアを思い巡らせています。
いずれにせよ、「あさがくナビ」では学生が早期の段階から身の丈に合った企業を自分軸で発見して選考に進んで行くのがベストであり、このことは同時に企業にとってもメリットが大きいと考えています。『就活ロボ』を通じて、サイトの特色・魅力をもっと理解して、「あさがくナビ」を企業と学生に有効に活用していただき、適切なマッチングを生み出していきたいと考えています。
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企業データ
社名 | 株式会社学情 |
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本社所在地 | 〒530-0001 大阪府大阪市北区梅田2-5-10 学情梅田コンパス |
事業内容 | 就職情報事業、 広告事業 |
設立 | 1977年11月7日 |
代表者名 | 代表取締役社長 中井清和 |