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インタビュー
株式会社学情 Web事業推進部副部長 高畑広基氏に聞く

学生側の早まる動きに、追いつけない企業を全面支援
プロアクティブ採用を打ち出した「あさがくナビ」

新卒採用のルール変更の波もおさまり、前年と同じルールで臨むことができた2018年度新卒採用。内定率が順調に伸びているという報道もあるが、その一方で、内定辞退者も増えているようだ。企業間における水面下での人材獲得競争も、相当に激化している。学生や企業は今、どのような状況にあるのだろうか。40年の歴史がある採用支援企業「あさがくナビ(朝日学情ナビ)」の運営責任者である、Web事業推進部・高畑広基氏に、最新の新卒採用の動向と採用成功に向けた企業戦略、そして同サイトの今後の方向性について聞いた。(取材日/2017年7月14日)

広報解禁の3月以前のアクションが当たり前の時代へ

―― 2018年度新卒採用活動では、どんな変化がありましたか。

2018年度新卒採用では、久しぶりにルール変更がありませんでした。学生側もこのスケジュールに慣れ、早目に動きながらしっかりと情報を収集していたようです。

インターンシップに関する学生へのアンケートを見ると、インターンシップに関する情報を探し始めた時期は6月が31.6%ともっとも多く、例年と比較しても大きな変化はありません。インターンシップに参加した時期を見ると夏場が大きなヤマとなっていますが、今年度は冬場にもヤマがあり、年末から年明けにかけて新たにインターンシップをスタートさせた企業が多くありました。学生にとっても、3月の広報解禁前のアクションは当たり前になりつつあるようです。

次に就職情報サイトへのアクセス状況を見ると、1月下旬から2月にかけて大きくアクセスが増えていて、試験が終わったあとの春休み期間、つまり、サイトが始まる3月1日以前から積極的に情報収集をする動きがありました。企業に聞くと、3月1日以前に接点を持った学生を3月1日のセミナーに呼び、一気に選考にかけるところが多かったようです。例年なら、学生は3月いっぱいエントリーをしていましたが、今年度は3月に入ってから大きくアクセスが下がりました。学生側の早い動きに、企業が追い付けていない印象があります。

―― インターンシップの活用状況はいかがでしょうか。

株式会社学情 Web事業推進部副部長 高畑広基氏photo

アンケートによると、学生のインターンシップへの参加率は71.3%でした。企業に実施したかどうかを聞いたところ、「実施している」が38.6%、「実施していない」が50.5%。未上場企業での実施は33.5%で、上場企業は63.7%でした。この数字を見ると、インターンシップでの学生との接触に関しては、中堅や中小が大手に遅れをとっていることがわかります。

学生にインターンシップに参加した理由を聞くと、「志望業界であること」が6割近くを占めました。一方、参加しなかった学生に理由を聞くと「スケジュールが合わなかった」が約5割。そう考えると、企業は夏、秋、冬と適宜インターンシップを行い、アクセスのあった学生を呼びこんでいくことで参加者を増やせると思われます。2018年度採用はまだ途中ですが、採用がうまくいっている企業は3月以前から学生と接触しています。3月になってから動いた企業は、苦戦しているようです。

内定辞退者が増え、「7月の追加募集」も増加へ

―― 内々定率の状況はいかがでしょうか。

内々定率の速報を見ると、国公立大-文系は85.7%で、昨年と比べても5ポイントアップと、それほど上がった印象はありません。活動率は39.5%で、昨年の43.0%と比べても、内々定率が上がったから活動を控えるという動きもあまりないようです。国公立・私立-理系は内々定率が90.2%で、昨年の82.7%から7.5ポイントアップしました。活動率は37.3%で、昨年(32.5%)と比較して活動する人が増えています。私立大-文系は内々定率85.0%で、昨年は83.8%。活動率は31.4%ですが、昨年は45.9%でしたから、やや落ち着いていることがわかります。

全体を見ると、学生は昨年並みのタイミングでは意志決定をしていないように感じます。7月に入ると、企業から「辞退が出始めた」という声が聞かれるようになりました。最近は「学生から承諾書をなかなか取れない」という声も多く、承諾書の提出期限が6月末だった学生から辞退されたケースは多いようです。そのため7月 に入ってから、「追加募集したい」という企業が増え、合同企業セミナー「就職博」との併用出展がとても増えています。

―― 学生にはどんな変化が見られますか。

株式会社学情 Web事業推進部副部長 高畑広基氏photo

広報開始が12月から3月へと変わったときは、3月オープンとなる就活サイトへのアクセスが大幅に増え、学生側の「待ちきれない」気持ちが伝わってきました。しかし最近は、そんな大きな動きが見られません。求人の市況も良いため、学生側にも安心感があるようです。

一人あたりのエントリー数は若干下がっており、絞り込んで動いている様子がうかがえます。学生にアンケートを取ってみると、企業ごとの採用人数を気にしていて、人数の多い企業に人気が集まりやすい傾向があります。就活において、安全策を取る傾向があるのでしょう。企業選びでは大手に加え、食品など安定性のある業種が人気であるなど、より安定志向が強まっているように感じています。

―― 企業が注意すべきポイントはありますか。

問題なのは、次年度の採用活動が重なっている点です。現在は2019年採用に向けて夏のインターンシップの学生を集める時期ですが、同時に2018年採用のクロージング時期でもあります。人事にたくさん人がいればいいのですが、それは厳しい。そのため、秋や冬にインターンシップを行う企業が急増しています。

2019年採用の動きを見ると、当社の6月 のインターンシップイベントでの学生の予約数が、昨年比147%と増えました。学生が昨年度よりもインターンシップの情報収集に一生懸命になっている様子がうかがえます。このようにインターンシップの重要度は増しているので、企業は全社一丸となって臨む必要が出てきていると感じます。

学生が前倒しで動ける「プロアクティブ採用」がカギを握る

―― 2019年採用では、企業にどんな提案をするご予定ですか。

私たちは、「あさがくナビ2019」「あさがくナビインターンシップ」「インターン・ジョブズ」といった複数のサイトとイベントを総合的に活かしながら、志望度が高い学生の有効母集団を形成する、高効率の採用活動「プロアクティブ採用」を企業に提案したいと考えています。

例えばサイトでは、6月に「あさがくナビ インターンシップ」がスタートし、翌年3月にはグランドサイトがオープンしますが、それとは別に通年型のインターンシップサイト「あさがくナビ インターン・ジョブズ」を3年前からオープンしています。ここには通年で実践型のインターンシップ情報が掲載されていますが、上位校を含め、非常に意欲の高い学生が集まっています。

また、イベントは春に加え、秋と冬にも「インターンシップ博」を開催する予定で、1年を通して、学生と接触できる場をご提供したいと考えています。ナビも含めて、これらのサービスをうまく使いながら、複合的に母集団をつくる。そして、学生をたくさん集めるのではなく、自社にマッチした学生を確実に集めることができるよう、サポートしていきたいと考えています。

―― 「あさがくナビ2019」では、どのような方向性を考えていますか。

また、面談で必ず聞かれる学生時代に力を入れたこと、いわゆる「ガクチカ情報」を、機能的に入力できるようシステム化しました。企業はガクチカ情報を見定めて、「スカウトメール」を送ることができます。学生のことをよくわかったうえで「ぜひ来てほしい」と口説く。これは「Gスカウト」という機能です。最近は選考中の辞退も多いですから、今後は応募段階から自社のことをよくわかっている学生を集め、その中で口説くという活動が重視されると思います。

他には、遠方の学生や面接の都合が合わない学生も選考が可能となるWeb面談システム「スマ面」を導入しました。学生は、スマホでも人事と話をすることができます。電話が苦手な学生も増えていますので、広く使ってほしいですね。

また、LINEアカウントによる会員登録・自動ログインもできるようになりました。すでに多くの学生がLINEで登録してくれています。LINEトークを使い、AIの就活ロボが就活の疑問に答える「就活ロボAIチャットサービス」も好評です。

どう見られたいかを設計し、わかる学生とつながる

―― これから企業は学生にどんな点をアピールすればよいのでしょうか。

「あさがくナビ2019」では、ターゲットの学生を個別にスカウトする逆求人型の機能を持たせ、ガクチカ情報を元にマッチしたスカウトが届くアピール型就活も可能になりました。これにより学生のエントリー数を増やすのでなく、接触の質を高め、企業がほしい学生を呼び込める採用活動を支援したいと考えています。実現するには、企業も学生へのアピールポイントを明確にし、意思をもって届けるよう工夫しなければなりません。

どんな企業にも、アピールポイントはあります。例えば会社は小さくても、社長含め、社員がフランクでサークル活動のノリでがあるのであれば、それを前面に押し出す戦略も良いでしょう。動画で社内の雰囲気を伝えるなど、風土を採用のブランドと捉え、伝えることも可能です。自社の持ち味をしっかりと認識し、ぶれずに伝えられている企業は、採用に成功しています。「そういうノリの会社は自分に合わない」と思う学生は応募しないので、スクリーニングの効果も見込めます。

学生をたくさん集めて大きな母集団をつくって選考する、という採用の時代はもう終わりました。自社の持ち味について考え、どう見られたいのかを設計し、そのことをしっかり伝えることでよりマッチした学生を集める。そうしたマッチングに重きをおいた活動を行うことが、現代における採用の解になると思います。

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企画・編集:『日本の人事部』編集部

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