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インタビュー
株式会社キャリタス キャリタス就活編集長 林茜氏
株式会社キャリタス キャリタスリサーチ研究員 松本あゆみ氏に聞く

多様化する企業・学生のニーズに応えるため、大規模リニューアルを実施
学生の本音を聞き、真摯に寄り添う「キャリタス」

2024年卒採用では企業の採用意欲が非常に高まり、学生の内定獲得時期がさらに早まった。一方、採用計画数を充足できない企業は半数を超え、採用活動期間は長期化。企業側の工数は増加している。こうした流れを踏まえて、企業は2025年卒新卒採用でどう動くべきなのか。キャリタス就活編集長 林茜氏とキャリタスリサーチ研究員 松本あゆみ氏に話を聞いた。

採用計画の充足が難しい企業が半数を超える

―― 2024年卒の新卒採用市場の動きをお聞かせください。

松本:企業の採用意欲が非常に高く、前年より採用意欲が増加した企業は当社調査では、34.4%となりました。30%を超えるのは2年連続で、コロナ禍からの回復が見られます。中でも大企業の採用意欲が非常に高まっていて、できるだけ早く学生と接点を持とうとする企業が多く見られました。採用プレ期にインターンシップ・仕事研究を実施したものの、集客に苦戦した企業は多かったようです。

また、24年卒の新卒採用市場は、「売り手市場」でした。調査では、学生の55.9%、企業は実に95.6%が売り手市場だと認識しています。この数値はコロナ禍前と同水準です。

こうした背景のもと、24年卒は大半の企業が採用に苦戦。7月時点での採用数の充足率は54.5%と低く、「採用計画の充足が難しい」と答えた企業が半数を超えました。一方、同時期の学生の内定率は86.0%で、7割以上の学生が就活を終えています。8月以降は活動する学生が減り、採用後半戦の厳しさはさらに増すでしょう。

長期的に傾向を分析すると、学生が動き出す時期は年々早まっています。以前はインターンシップなどの情報解禁時期である大学3年生の6月から動き出すのは、意識が高い学生でした。今、その時期に動くのは当たり前のようで、大学3年生の4〜5月、さらには2年生から就職活動を始める学生も増えているほどです。

林:就活期間が長くなっているため、学生の動きが分散しています。早期に複数の内定を得る学生がいる一方、なかなか活動しない学生も増えています。売り手市場であることに加え、彼らが大学に入学したタイミングは、コロナ禍のただなかで、思い描いていた大学生活を送れませんでした。コロナ禍が収束した今、彼らには時間を割きたい活動が数多くあり、就職活動の優先順位が下がっているかもしれません。

―― こうした環境で、企業の2024年卒新卒採用の成否はどこにあったのでしょうか。

キャリタス就活編集長 林茜氏 photo

松本:引き続き、知名度や就職人気の高い企業が学生を集めやすい傾向にあるのは確かです。それ以外の企業の場合、採用活動の時期を早めたり、社員と会わせる機会を増やしたりするなど活動内容を工夫した企業、また、物価の上昇を背景に初任給の引き上げなど待遇面の改善をした企業が成功しているようです。

昨年まで最終面接以外はオンラインが中心でしたが、要所で対面の対応を取り入れる企業が増えました。学生に魅力を伝えたいときは対面で行い、効率を重視する場面はオンラインで実施するなど、戦略的に切り替えることができた企業は採用も比較的うまくいった印象です。セミナーの参加者数を増やすために、負担は大きいけれど実施回数を増やした企業もありました。

広報活動を強めたり、動きを早めたりする企業が増えたために、例年と同じ方法で採用活動を進めた企業からは、「いつも通りやっているのにうまくいかなかった」という声も聞かれました。

林:インターンシップや仕事研究プログラムについては、実施日数が長いほど学生の満足度が高い傾向にあります。日程が長いことでより深く会社を知ることができ、さまざまな体験と企業からのフィードバックが得られます。こうしたことも満足度につながっているのでしょう。

――学生の動きは、どう変化していますか。

松本:インターンシップや仕事研究プログラムから企業とつながることが増え、早い時期に志望度が高い企業から内定をもらうケースが増えています。すると、その企業と同程度か、さらに志望度が高い企業だけに応募を絞れるため、全体のエントリー数は減少傾向にあり、企業が学生に会える機会が減っています。

最近はエントリーシート(ES)の提出スケジュールの早期化が進み、情報解禁直後の3月1週目に設定されている場合もあります。企業が学生を逃さないよう、早期に選考ルートに乗せたいと考えているからです。

学生はプレ期に接点があった企業のスケジュールはあらかじめ知っていますが、情報解禁後に初めて知った企業だと、認知からES提出までの期間が非常に短い。ES提出を諦めてしまう学生もいるため、スケジュール設定は難しいところです。

早期に活動する学生と、のんびり活動する学生との温度差が開いていく可能性も

―― 2025年卒新卒採用において、学生はどう動くと予想されていますか。

松本:活動の早期化傾向は変わらないと思います。人気企業に入社するには大学3年生の夏からインターンシップなどに行き、早期の選考に乗らなくてはならないという意識が浸透しています。一方で、売り手市場であるという認識があるため、のんびりと活動する学生がさらに増え、学生によって活動量に差が生まれる可能性もあるでしょう。

―― 学生の動きを踏まえて、企業は2025年卒採用でどう動けばいいのでしょうか。

松本:当社の調査では、学生と早期に接点を作るため、面接の開始や内定出しの時期を早めると回答した企業が多くみられました。ただ、現時点でも十分に早期化しているので、あまりに前倒しし過ぎると、内定辞退が増えるなど、工数が増えただけで効果は見込めないことも考えられます。実際は24年卒並みのスケジュールを維持する企業が大半ではないでしょうか。

活動開始が早まり続けていることから、最初の接触から入社まで、1学年に対する採用活動は2年ほどにわたり、企業の工数は非常に多くなっています。マンパワーのある企業は対応できますが、そうでない企業はつらい状況にあります。採用担当や人事だけで採用活動をするのではなく、会社全体で採用活動に取り組む姿勢が必要になってくるでしょう。

林:もちろん、志望度を上げる取り組みも大切ですが、基本給などの待遇や、初期配属先など、条件面を改善することも重要でしょう。売り手市場のため、学生は「条件」で企業を選ぶ傾向が強くなっています。また、インターンシップなどで、会社や社員のリアルな雰囲気、仕事のやりがいを伝える機会は非常に有効です。

大手や人気企業だけではなく、企業の魅力を学生に伝える機会を提供

―― 2025年卒採用に向けて展開している、貴社のサービスや商品のコンセプト、特徴をお聞かせください。

キャリタス就活編集長 林茜氏 photo

林:これまでは「キャリタス就活“2024”」のように卒業年度ごとに、サイトを分けて展開してきました。2025年卒以降は年度という区分をなくし、「キャリタス就活」として全学年が同じサイトを使う形式にフルリニューアルしました。

学生には、ログインすることで年次に最適化された情報を表示。一つのサイトで、2025年卒の本選考の応募が可能で、26年卒以降の学生はインターンシップ等に応募できるようになります。

年次で区切らず通年化したことによって、企業は低学年からアプローチした情報を本選考まで引き継いで管理できるようになります。

リニューアル後は「本音をきく、本気でこたえる。」というキャッチコピーを掲げ、引き続き学生の本音を聞いて真摯に向き合って寄り添っていくことを基本にしています。

サービスの特徴は大きく三つあります。一つ目は、多様な企業発見軸の提供。企業検索で、「クチコミの評価が高い企業」「自分の大学への求人票への配信実績がある企業」などの観点からの絞り込みが可能です。

また、新たに業界別や都道府県別の企業ランキング特集をつくりました。売上高、研究開発費、年収が高い、女性役員比率が高いなどさまざまな切り口で掲載しています。業界別や都道府県別で表示することで、全国区版以上に多様な企業が学生の目に触れることになります。

オンラインで開催する「ミートアップ」など、スカウトの仕組みを利用して志向や価値観が合う学生と企業をマッチングする少人数のイベントも実施。お互いにマッチした企業と学生が出会える機会を創出しています。

二つ目は、学生の選考対策支援です。ES・選考対策、体験談という二つの機能を実装しました。いわゆるクチコミ機能で、学生は先輩学生のES閲覧、インターンシップや本選考の体験談やアドバイスを確認できます。先輩学生のクチコミは、学生の志望度向上にもつながるほか、企業が知りたいポイントについて、より理解を深めた状態で選考に訪れることも期待できます。

三つ目は、就職活動に取り組む学生が安心できるよう寄り添ったサポート機能です。例えば、就活アドバイザーにメッセージで相談できる「あんしん相談」を導入。キャリタス就活から申し込んだイベントや企業説明会などへの移動中や参加中にけがをした場合、入院・通院保障をする「あんしん保険」も新たにつくりました。

このように、「キャリタス就活」には、知名度によらず、学生が自分に合っているかどうかで企業を探せる仕掛けが数多くあります。採用工数の増加など企業の負荷は年々増していますが、フルリニューアルによって、低学年次からの学生情報の一元管理、企業広報も可能になっています。今後も採用担当者の負担を押さえ、各企業の強みを学生に届けられるよう、支援していきます。

株式会社キャリタス キャリタス就活編集長 林茜氏、キャリタスリサーチ研究員 松本あゆみ氏

企業データ

社名 株式会社キャリタス
本社所在地 〒112-0004
東京都文京区後楽2-5-1 飯田橋ファーストビル 9階
事業内容
  • 企業の人財採用に関するコンサルティング、採用広報活動の企画提案
  • 学生募集に関するコンサルティング
  • 人財紹介等を行う総合人財関連企業
  • 就職・進学情報メディアの企画、運営
設立 1973年10月
代表者名 代表取締役社長 新留 正朗

会社情報

企画・編集:『日本の人事部』編集部

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