志向の多様化・体験の個別化に対応した機能で
採用活動の納得度をトータルで高める「マイナビ」
大学3年夏のインターン参加が定番化し、オンライン選考も定着しつつある新卒採用。売り手市場の加速と活動の早期化は、学生や企業にどのような影響を及ぼしたのか。株式会社マイナビ 事業推進統括事業部の大塚亮氏に、2023年卒採用に見る全体的な傾向と、トレンドを踏まえた2024年卒採用の展望、企業の採用活動を後押しする同社の注目のサービスについてうかがった。
就職活動の早期化によって学生側の企業を厳選する動きが加速
―― 2023年卒採用には、どのような特徴がありましたか。
学生側と企業側で分けて解説します。まず学生側では四つのポイントがあります。一つは就活に対する不安の減少です。マイナビの調査では、2022年卒の学生の3割以上が就活に対する不安の要因として、「新型コロナウイルスの影響から採用規模が縮小するのではないか」「企業と直接会う機会が減少するのではないか」を挙げていました。それが2023年卒の学生では両方とも2022年卒と比べると半減しています。一方で「安定した企業に就職したい」と答える学生は44%と、調査を開始した2003年以降、最も高い割合でした。
二つ目の特徴は、夏期インターンシップ(インターン)の活発化です。3年生の9月末の時点で、83%の学生が何かしらのインターンに参加しています。また従来と比較して、志望企業の吟味、絞り込みを目的に参加する動きが強まっています。慎重さはエントリー数にも反映されていて、全体の参加学生数は増えているものの、応募数は微増に留まりました。
三つ目の特徴は、活動の時期と量に変化が見られたことです。インターンのピークが3年の夏に移ったことで、選考開始直前の時期は夏にインターンに参加した企業との面談や会社訪問など、社員との接触を図る学生の割合が増えています。
そして四つ目の特徴は、内々定の早期化です。3月で26.4%、4月で47.3%と、半数近くの学生が春には何かしらの内々定を得ていて、どちらも昨年比で5~6ポイント増加しています。ちなみに6月末の時点では約8割で、2020年以降の調査では最高でした。そのため就活を終了する時期も4月末で2割程度と、早まっていることがわかります。
―― 企業側の特徴はどうでしょうか。
前年に比べて採用人数を増やした企業が増えました。特に上場企業の採用意欲が回復し、マイナビの調査では「採用人数を増やした」と回答した企業が前年比15ポイントアップの34%に上りました。特にマスコミ、製造業、サービス業、インフラの増加割合が高まっています。
その反動か、採用予定人数を確保できない企業が目立ちました。中でも建設業や小売業では4割の企業が「確保が難しい」と答えています。その理由として、母集団形成の厳しさを挙げています。全体の半数近くが「エントリー数が減った」と答えており、選考受験、セミナー参加についても3割の企業で昨年より応募数が減ったとしています。
特筆すべき点は、インターンに参加した学生が、選考途中でリタイヤしたり、内々定を辞退したりする現象が見られたことです。インターンへの参加時点でその会社への興味は一時的に高まるものの、選考開始までの期間に熱量が下がったまま春を迎えていると考えられます。
―― 総括すると、どういう傾向が見られましたか。
全体的な傾向としては、活動が早期化していると言えるでしょう。就職情報サイト・マイナビでの6月1日時点での夏期インターン掲載企業数は、年々増加傾向にあります。23年卒は前年比約700社増、24年卒は前年比1400社増となり、マイナビ2024では7800社を掲載しています。
3年生の夏にインターンに参加し、そこから業界研究や企業研究が進むため、選考段階では企業を厳選してエントリーする、内々定を受けた時点で判断軸ができていて活動終了も早くなる、という流れが生じている可能性があります。その傾向を裏付けるものとして、一人当たりのインターン応募社数は12.4社とやや増加し、選考応募社数は24.9社と昨年比で2社程度減ったというデータもあります。
そのため早期化の波にうまく乗れた企業は、採用活動も順調だったのではないでしょうか。一方で5月以降に選考を行う企業では、母集団形成に苦労するケースが散見されました。ただし採用活動のピークは、業界や地域によって多少バラつきがあります。特に地方ではインターンが一般化していないところも多く、都市部に比べて遅くなる傾向があります。
またインターンの充実が、採用の成否を左右するようです。提供する情報や機会を吟味し、学生自身が働く姿をイメージできるコンテンツを用意できた企業は、採用もうまくいったと答えています。実際、インターンに参加した学生の4割超が「もっと働いている人の雰囲気を知りたかった」と答えています。また内定先の決まった理系学生に調査したところ、インターンでの体験や、選考活動中の職場見学や実務体験、社員交流などを通じて、採用された職種の理解が深まったと回答しています。
インターン手法はオンラインと対面を併用する企業がおよそ半数で、コンテンツ内容から手法を検討する傾向にあります。学生はオンラインでのインターン参加や選考に適応できている反面、対面での内定者フォローを希望するニーズがあるようです。就活での学生同士のコミュニティ形成が希薄になった分、内定者同士での関係構築を期待しているといえます。
人材要件の明確化と情報提供の個別化で学生のニーズに細やかに対応する
―― 2024年卒採用はどのような動きが予想されますか。
学生の活動状況は二極化すると見ています。大手を中心に、一部企業では6月でインターン募集を締め切っている状況です。そうした企業を希望する学生は3年夏の時点で活発に活動している一方、地方では地元志向の学生の動き出しが遅くなることが予想されます。
また昨年度と異なり、対面授業を復活させる大学も増えてきました。1、2年時は在宅中心で思うように過ごせなかった分、キャンパスライフを謳歌したいと考える学生は多く、キャリア・就職活動の優先度は相対的に下がると見られます。24年卒も売り手市場であることは変わらないため、行動量そのものの減少も考えられます。
企業側は、中長期的なトレンドを見据えておく必要があります。2024年卒採用では、目に見える変化は恐らくありませんが、変化への兆しは見える年になるでしょう。 まずは政府が6月に発表した、次年度以降のインターンのルール改正です。オープン・カンパニーをはじめ、目的別にインターンを種別化するほか、実施日数や就業体験など一定の条件を満たしたインターンは、参加した学生の評価を採用に活用できるようになります。1、2年次から企業と接点を持つ機会が増え、さらなる就活の早期化が予想されます。
もう一つのトレンドはジョブ型雇用の加速です。学生の就職観が企業軸から仕事軸に移りつつある中、入社後の仕事内容が明確なのは安心感を得られるだけでなく、将来のキャリアプランを立てやすくなることからジョブ型雇用は比較的歓迎される傾向があります。ただ組織によっては調整が難しかったり、中小企業は一人当たりの業務範囲が広くなりがちだったりするので、制度化に難航している企業も少なくありません。
―― そのような状況を踏まえて、企業はどのように採用活動を進めていくべきでしょうか。
ポイントは二つあります。一つは人材要件の明確化です。例年を踏襲する方針だとしても、人材要件はぜひ見直して具体化を図る必要があるでしょう。能力面、性格面に加え、自社のどの部分に共感してくれる学生が良いのか、さらに職種別コンピテンシー、短期・中長期のキャリアパス例も明らかにしておくと良いでしょう。
新入社員に期待する働きや能力、習得してほしいスキルの具体化は、マッチングの適正化につながります。条件を満たす学生を獲得できれば早期戦力化しやすく、本人も成長実感を得られやすいので、モチベーションやエンゲージメントの向上にも効果的です。
しかし人材要件があいまいなままだと、ゼロベースでの育成が必要になります。戦力化に時間を要し、抽象的な成長マップしか示せないことで不満が募り、3年後には離職するといったことも起こりかねません。仮に総合職での採用であっても、具体的な職業や将来性、入社後の働き方やキャリアの重ね方の解像度を上げて伝える必要があるでしょう。
そしてもう一つのポイントは、情報発信の個別化です。従来の全体・画一的な発信ではなく、対象となる学生の自社との接触頻度やニーズに合わせて、提供する情報を変える必要があります。たとえば夏のインターンや社員交流会に参加したことのある学生と、今まで接点のなかった学生では、3月の説明会の時点で企業に対する理解度に差が生じています。それぞれが得たい情報は異なるはずで、既に接点のある学生には収穫の少ない内容では志望意欲が下がってしまう可能性があります。個別のコミュニケーションに重点を置くことが大切でしょう。
市場の動きを先取りした情報の質向上と業務効率化に効果的なサービス
―― ここまでの解説を踏まえ、貴社の注目サービスについて教えてください。
マイナビは就活・採用市場だけでなく、社会全体の動きを先取りしつつ、企業と学生双方の良い出会いにつながるサービスを開発し続けてきました。最近では母集団形成の難しい5月以降に選考を行う企業をサイトで優先的に表示し、残りの採用人数を明示できる設定にしたことで、企業や学生、大学から高い評価をいただきました。また就活の早期化に伴う学業阻害を防ぐため、学生生活のすきま時間に情報収集できる企画の充実を図っています。マイナビ2024については、情報の質の向上と業務効率化につながる、次の四つのサービスを特におすすめしています。
1)短編動画の公開
マイナビ内で、1分以内の会社紹介と仕事紹介動画を掲載できるサービスです。動画に慣れ親しんだZ世代に向けて、短時間でイメージが湧くようなコンテンツを発信し、自社をアピールできます。コンテンツ制作はマイナビが行うので、素材準備などの手間も省けます。
2)新機軸の取材記事掲載
SDGs、DX、リモートワークなど学生の関心が高く、新たな企業選択の要素となる切り口で取材記事をマイナビ内に掲載します。制作はマイナビが行い、自社事例を交えつつ、学生にわかりやすく興味喚起につながる記事を提供します。サイト内では新機軸での記事検索ができるため、企業の知名度によらず、認知機会を増やすことが可能です。
3)先輩社員紹介機能の拡充
マイナビ2023で好評だった先輩社員情報について、公開できる情報項目を追加しました。従来からある写真とコメントに加え、これまでの経歴や1日のスケジュール、就活時に選考を受けていた業界などを掲載でき、学生の企業理解や職業理解を促します。また管理画面のUXを改善し、先輩社員がマイナビのフォームに直接入力できるようになりました。
4)DX人材育成研修
業界、業種を問わずあらゆる企業の課題であるDX推進に対応した、企業向け研修プログラムを開発しました。AI・データ分析を専門とするALBERT社と共同でコンテンツを開発し、DXの基礎や仮説思考、データ活用について学べます。内定者研修や新入社員教育だけでなく、中堅社員や管理職まで利用できる内容で、DX人材の活用促進と組織のデジタルリテラシーの底上げを図るのに効果的です。
マイナビでは志向の多様化、体験の個別化を重視し、今回紹介したサービスの他にもトータルでの満足度、納得度を高められるように、機能の充実を図ってきました。就活を取り巻く環境は大きく変化しています。これからも確実な採用に結びつくサービスで、人事の方々をバックアップします。
バックナンバー/2021年卒採用インタビュー
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企業データ
社名 | 株式会社マイナビ |
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本社所在地 | 〒100-0003 東京都千代田区一ツ橋1-1-1 |
事業内容 |
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設立 | 1973年8月15日 |
代表者名 | 代表取締役 社長執行役員 土屋 芳明 |