学生向けサービスに人材領域に特化したAIエンジン「HaRi」を導入
企業にとっても納得度の高い採用活動を支援する「マイナビ」
3月に採用告知解禁、6月に選考活動開始。このスケジュールが2シーズン目を迎えた新卒採用は、これまで以上に短期決戦化が進んだと言われる。ポイントになったのは、インターンシップなどを通じて少しでも早く始動したい企業・学生双方の動きだ。立ち上がりが早かった2018年卒採用に引き続き、2019年卒採用に向けての活動も本格化しつつある。売り手市場が定着した環境下で人材を確保するには何が必要なのか。日本最大級の就職情報サイト「マイナビ」が分析した最新データをもとにした、採用成功のために必要な戦略を、同社事業推進統括部の粟井俊介統括部長に聞いた。
短期決戦化によって高まるインターンシップへの注目度
――まずは、2018年卒の採用市場の振り返りからお聞きかせください。
情報解禁が3月、選考開始が6月になって2年目、動き自体に大きな変化はありませんでしたが、昨年以上に「短期決戦化」が進んだと言えるでしょう。3月1日から一気にエントリーが集中する勢いは、これまでになかったレベル。つまり、学生は2月までにどこへエントリーするのか、「企業の吟味」を進めていたということです。ここで学生への認知施策に出遅れた企業は、知ってもらう大きなチャンスを逃した可能性もあります。
――3月1日の情報解禁より前がポイントだったということでしょうか。
そう言わざるを得ないと思います。そこで各企業が注力しているのが、3月よりも前に学生に実際の就業体験を通じて知ってもらう「インターンシップ」です。3年生の夏休みから本格化し、近年では秋から冬にかけてのインターンシップも盛んになってきました。特に1月、2月という直前期になると、さらに多くの企業で開催されるようになっています。もちろん、インターンシップ自体は学生の就業体験であって、建前上は採用に直結しないもの。しかし、企業としては、会社の雰囲気や仕事内容を知ってもらい、興味があれば3月以降にそのままエントリーしてほしい、というのが本音です。
数年前まで、費用も手間もかかるインターンシップは、主に大手企業が取り組むものでした。しかし、今は中堅・中小企業でも大変熱心に取り組んでいて、採用成功には欠かせない、という考え方が定着してきています。ただし正確に言えば、インターンシップ自体に大きな期待をかけているわけではありません。インターン募集の告知を通して、早い時期から多くの学生に知ってもらえるという効果を無視できないのです。主流は、いわゆる「1dayインターン」。企業アンケートの結果によると、秋から冬の時期は60%以上が「1day」です。これは、多くの企業を回りたい学生側の希望とも合致します。
――実施企業が増えると、インターン募集も競争が激しくなりそうですね。
その通りです。学生はインターンに応募する際、自分が興味のある会社をかなり絞り込む傾向があります。弊社のデータでは多い学生でも6~8社、平均は3社。就活開始後のエントリーや会社説明会への参加と比べると、かなり少ない数字です。逆に言えば、インターンに応募してくる学生は自社に興味を持っている可能性が高いので、企業側も真剣に取り組む価値があります。
「マイナビ2019」を経由してのインターン募集社数も、対前年170%と大きく伸びています。その数は4,000社近くで、10年前と比較すると10倍以上になっています。合説形式の「インターンシップフェア」も人気で、回数・開催地域を増やしてもすぐに枠が埋まってしまうほど。企業情報を発信するにあたって3月の広報解禁からでは遅い、と考える企業が増えているのは間違いないでしょう。
集めるだけではなく、十分に企業理解を深めてもらう必要もあります。その時に大事なのは、現場の協力が得られること。学生は、なるべく年齢の近い社員の生の声を聞きたがります。仕事の疑似体験やグループワークを通して、リアリティーのあるアドバイスをしていくことが重要ですが、そうしたプログラムを一から作るのは大変だ、という企業もあるでしょう。弊社ではそういう時に活用できる、パッケージ化されたコンテンツもご用意しています。募集やフォローアップとセットで利用できるのが強みと考えています。
売り手市場が生んだ6月末での内定保有率「73%」という数字
――続いて3月解禁、6月選考という「本番」以降のトレンドはどうだったのでしょうか。
ここ数年の傾向ですが「売り手市場」の感覚がさらに強まりました。それが顕著に出ているのが学生の大手志向。「マイナビ」のデータでも、8年ぶりに大手志向の学生が50%を超えました。リーマンショックや東日本大震災の影響もあり、多くの学生が「身の丈にあった就活」を意識した時期もありましたが、景況感が回復したことで、2018年卒では大手志向の学生が増えています。また、過労死問題が大きな話題になったこともあり、各企業の「働き方」に注目する学生も増えています。働き方に問題があると見られた企業は、大手であっても苦戦したのではないでしょうか。
「売り手市場」は、内定率にも大きく影響しています。今年はどの時期も、前年比で10ポイント近く高い推移となりました。5月末の段階で半数以上の学生が内定を保有しており、その内定を持った状態で6月の大手の選考に臨んだことになります。大手の合否は、6月第一週でほぼ出そろいます。例年、大手に受からなかった学生は、5月以前に内定をもらった企業に決めるか、もう少し活動を続けるかで迷う時期があるのですが、今年はそれがほとんどなかったのも特徴です。これはアンケートのデータにもはっきりと表れています。
――それは何を意味するのでしょうか。
おそらく5月以前に経団連の指針に制限されない企業の中でも優良な企業、または自分の希望に合致した企業から内定を得ていたということでしょう。6月末の段階での内定率は73%に達しています。これは近年にはなかった驚異的な数字です。今年の学生の就活満足度はかなり高くなると見ています。まさに「売り手市場」だったということですね。
――そうなると、中堅・中小企業で夏場を採用ピークとしている企業もありますが厳しいですね。
結果として今の時点(7月下旬)で、もうあまり学生が残っていない可能性があります。夏場から秋以降の採用の可能性はゼロではありませんが、現実問題として厳しいのは間違いないでしょう。実際に最新のデータでは、「順調」との回答が25%前後に留まり、残る約75%は、「確保は難しい」あるいは「五分五分」という回答結果となりました。
――2019年卒の採用成功のためには何が求められますか。
すでに3年生を対象とした夏のインターンシップの募集告知は、過去最高を記録しています。秋以降はもっと多くなるでしょう。また、インターンを行わない企業でも、早い時期からの学生へのアピールは可能です。「マイナビ」でも、企業情報を特集形式で告知できる企画をこの秋以降、順次オープンさせていきます。こうした「早めの始動」は採用成功において不可欠です。
もう一つ大切なのは、学生に提供する情報の中身のブラッシュアップです。とりわけ大事なのは、学生が注目している「働き方」や「キャリア形成」、さらには「働くことを通じて人生をどう充実させるか」。そういった情報を、まだ十分に提供できていない企業も多いのではないでしょうか。「若者雇用促進法」による3類型13項目の情報については明示が義務づけられましたが、たとえば「女性管理職の比率」ならば、その数値を記載するだけではいけません。その背景にある企業の考え方、実際に女性管理職がどういう仕事をしているのか、どういうキャリアを歩んでいるのかまで、しっかりと掘り下げた情報を提供することが重要です。
SNS上での動画配信、AIによるマッチング…「HR Tech」サービス開始
――2019年卒採用に向けて、「マイナビ」ではどのような取り組みを予定しているのでしょうか。
新たなオプションサービスとして、30秒から1分程度の企業のPR動画を、ツイッターなどSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)上に配信していく企画がスタートします。今や就職情報サイトはほとんどの学生が利用する媒体となり、その中でも「マイナビ」は掲載社数、利用者数ともにトップクラスの規模となりました。そこからもっと広い範囲にアプローチしていくために「マイナビ」の外部にも目を向けていこう、ということです。多くの学生が情報収集に活用するスマホやSNSは、動画との親和性が非常に高いツールです。これによって「マイナビ」にまだ登録していない層にも、企業情報を届けることが可能になります。
この他にも、動画に注力していきます。これまでの特集企画は、文字+写真がメインでしたが、動画を使えば、スケール感など言葉や写真だけでは伝えきれなかった企業の魅力を表現することもできます。今年から始まる「Tech Exhibiton~テック・エキシビション~」はメーカー中心に技術力を訴求していく企画ですが、いずれはもっと広い分野でも、この動画サービスを強化していきたいと思っています。
さらに、2019年卒に向けてのもう一つの目玉は、学生向けサービスに「AI」を導入することです。三菱総合研究所が開発した、HR(人材)領域に特化したAIエンジン「HaRi」を利用し、弊社と共同でサービスを開発しました。
――具体的には、どのようなサービスなのでしょうか。
「マイナビ」には膨大な採用情報がありますが、その中から学生一人ひとりが自分自身にあった企業をどうやって見つければいいのかは、課題でもありました。もちろん、検索機能はありますが、学生自身が何をやりたいのか、何に興味があるのかがぼんやりしている段階では、あまり有効ではありません。そこで今回導入したのが、マッチングに特化した「AI」です。志望がはっきりしていなくても、自分の考えていることを文章で書き込むと、AIが解析して、同様に読み込んだ企業情報と照らし合わせ、一致度の高い企業から順に表示してくれます。この秋からオープンする、「納得できる企業研究」というコンテンツです。
従来のフリーワード検索との違いは、AIが言葉の意味や重要度などを正しく解釈した上で自動的にマッチングしてくれること。特別なコツも必要ありませんし、精度は格段に向上しています。もちろん、なぜこの企業との合致度が高いのかという理由も表示します。同時に、企業情報もAIが読み込んで解析しますので、情報を詳しく書けば書くほど相性のいいマッチングが表示される、という特徴があります。企業側には、新たな費用負担などがありません。「マイナビ」全体のマッチング精度を向上させる取り組みとして、進めていきたいと考えています。
――昨今注目されている、「HR Tech」のような新サービスですね。
今後この分野は、さらに重要になっていくでしょうね。「マイナビ2019」とは別のサービスですが、エントリーシートをはじめとした企業の選考データを活用した「AI優先度診断サービス」も同じくHR Techサービスです。簡単に言えば、前年のエントリーシートとその選考結果を読み込ませることで、各企業の求める人物モデルをAIが自動的に学習し、その結果にもとづいてエントリーシートの判定を行います。省力化、スピードアップに加えて、見落としなどのロスを完全に防ぐことができ、人間による判断を強力にサポートすることがでいます。また、選考辞退など離脱の可能性診断や「コピペ」の文章を使っているかどうかを判定する機能などもあります。WEBサービスで従量課金制のため、導入はとても簡単です。こちらは先行して15社で試験導入されていて、大変ご好評をいただいています。本格リリースは今秋の予定です。AIを活用したサービスの中でも具体的なものとして実績ができてきていますので、ご興味があればぜひお気軽にお問い合わせください。
バックナンバー/2019年卒採用インタビュー
バックナンバー/2017年卒採用インタビュー
バックナンバー/2016年卒採用インタビュー
バックナンバー/2015年卒採用インタビュー
バックナンバー/2014年卒採用インタビュー
バックナンバー/2013年卒採用インタビュー
バックナンバー/2012年卒採用インタビュー
企業データ
社名 | 株式会社マイナビ |
---|---|
本社所在地 | 〒100-0003 東京都千代田区一ツ橋1-1-1 |
事業内容 |
|
設立 | 1973年8月15日 |
代表者名 | 代表取締役社長 中川 信行 |