先行きが不透明な採用活動を強いられるなか、
ニューノーマルな時代ならではの企画を打ち出す「マイナビ」
企業と学生のコミュニケーション量拡大に重きを置く
新型コロナウイルスの感染拡大は、2021年卒採用にどのような影響をもたらしたのか。今後もウィズコロナの世界が続くと見られるなか、2022年卒採用はどんな展開になるのか。マイナビ 事業推進統括事業部 事業部長・林俊夫氏に、同社の取り組みと合わせてうかがいました。
ニューノーマルな採用・就職活動が浸透。企業や学生に不安感が漂う
―― 2021年卒の採用市場を振り返って、どのようなことが特徴として挙げられますか。
新型コロナウイルスの発生前後で状況は大きく異なります。発生前は、インターンシップが活発に行われていました。実施した企業の割合は2020年卒の55.2%から2021年卒は56.9%に、マイナビへのインターンシップ掲載社数は1.1万社から1.25万社へと拡大しました。学生のインターンシップの参加率も高く、79.9%から85.3%に上昇。一人あたりのインターンシップの参加社数も、3.6社から4.9社へと大幅に増えました。
学生にとって、インターンシップの意味合いも変わってきています。かつてインターンシップに参加する目的とは、自分がやりたいことを見つけたり、視野を広げたりすることでした。
しかし、就職活動において希望する業界や仕事を絞り込むタイミングが早くなり、学生は特定の企業の情報をしっかりと収集するようになりました。そのためインターンシップは、ホームページの外面的な内容だけではわからない情報を、実際に目で見て体感するための機会となっています。情報収集をする上で、優先順位の高い手段に位置づけられたといえるでしょう。
本当にこの企業の選考を受けるのか、会社説明会に行くのかといった絞り込みが年明け以降、さらに加速して行っていた感があります。3月以降は企業が積極的に選考を行いますが、1月・2月のプレ期間で学生は企業の絞り込みを済ませているので、説明会に行く社数は減るだろうと予測していました。そのタイミングで、新型コロナウイルスが発生したわけです。
―― 新型コロナウイルスの発生によって、採用市場はどう変わりましたか。
影響が出始めたのは、2月前半くらいからでした。当社が主催する合同説明会は3月以降も開催を予定していたのですが、感染者の増加を踏まえて、3月はすべて中止にしました。企業側も首都圏を中心に、多くの企業が会社説明会の開催を取り止めました。
この時点では採用予定者数を「前年並み」としている企業が多かったのですが、8月時点での内々定率は77.6%。前年が82.6%なので、5ポイント低くなっています。
WEB化の加速も、2021年卒採用の大きな特徴です。緊急事態宣言の発令以降、都市圏を中心に企業の採用活動が停滞。4月・5月は選考がストップし、5月下旬以降へ後ろ倒しの状態となったのです。WEBでの会社説明会の比率が対面の比率を越えたのは4月上旬。ただし、都市圏の上場企業が中心でした。地方の中小企業、特に非常事態宣言が発令されていないエリアではWEB対応はあまり進んでいませんでした。
WEB化は進行しましたが、すべてが代替されたわけではありません。また、5月まではすべての採用活動をWEBで行う企業も多かったのですが、徐々に対面とWEBをハイブリットで行うようになっていきました。
学生に聞いてみると、「全工程がWEB化されるのは不安」「説明会はWEBでも構わないけれど、一次面接以降は対面で行ってほしい」という声が多いですね。
就職活動では、面接前の待合室での学生同士のコミュニケーションや、集団面接での隣の学生の受け応えも参考になります。ところが、WEBになるとそうした情報が一切入って来ません。学生たちは、とにかく孤独な就職活動を強いられることになりました。「この企業で良いのか」を判断する材料も少なかったため、不安を抱えての決断となったでしょう。「WEB上で自分のことをちゃんと認識してもらえるのか」と不安に思う学生も多かったようです。
ただ、それは企業も同じで、自分たちの情報がどういう形でどこまで伝わっているのか、なかなか確信を持てませんでした。「適切なマッチングができているのか」という不安を抱えながら、採用活動を行わざるを得なかったわけです。その答え合わせができるのは、入社してからです。今回、ニューノーマルでの就職活動が浸透しましたが、それが良かったのかどうか。引き続きマイナビでは、企業や学生の声を集める中で、何が最適なマッチングにつながるかを検証し続けなければいけないと考えています。
見通しにくい2022年卒採用。厳選採用になる予感も
―― 2022年卒採用は、どのようになるとお考えですか。
依然として、新型コロナウイルスの影響を考慮しながらの採用活動となります。気になるのは、ここ数年企業のインターンシップ実施率が上がり続けていたのに、マイナビ2022では掲載社数が前年を下回っていること。採用意欲の低下から来ているのか、オンライン対応ができないからなのか、判断が分かれるところですが、新卒採用の計画をまだ策定できず、多くの企業が二の足を踏んでいるのではないでしょうか。
採用数を縮小することになった場合、厳選採用の色が濃くなります。厳選採用を行う上では、効率化と厳選化をどうやっていくかがポイントです。また、2021年卒採用で浸透したニューノーマルな採用・就職活動を、企業や学生がどう有効活用できるかも重要です。
――2022年卒採用において、企業や学生はどう動くべきでしょうか。
企業は採用計画を決め難い状態にありますが、採用活動を行う場合はWEB化への対応が必須です。できれば、WEBと対面両方で対応できるリソースを作っておくといいでしょう。どちらでも対応するというスタンスが、採用活動を行う上での「エチケット」的な位置付けになっていくと思われます。
ただ、WEBセミナーに慣れない企業が、自社の魅力が伝わりきらないような状態になることを危惧しています。WEB化がより浸透すると、学生からオンラインセミナーに対する評価が進みます。自社の発信するコンテンツが、学生にとって価値あるものであるかどうかを検証し、他の企業と差別化させることが学生の意欲形成につながるはずです。
WEBでの面接は、不慣れだと学生とのやりとりがスムーズにいかず、どうしても一問一答になりがちです。そのため、面接の進め方や会話にもテクニックが必要です。また、事前にその学生がどういう人なのかが分かる質問や、確認点などを用意しておくほうが進めやすく、エントリーシートや適性テスト、研究概要書などを活用して、その学生を理解するための材料を、事前に取りそろえておくことも重要です。
次に学生ですが、企業にとって学生一人ひとりを見極めることが難しくなっているからこそ、自分のアピールポイントを明確かつ端的に伝えられるようにしておくべきです。WEBというフィルターを通してでも自分の強みが伝わるようなインパクトや、覚えてもらいやすい特徴を武器として何か持っておけるよう、自己分析を深めておいた方がいいですね。
――ジョブ型の採用はどこまで広がっていくとお考えですか。
最近報道でも増えてきているように、徐々に取り入れる企業は増えていくと予想しています。そうなると、学生を見極める視点は「意欲的に仕事をしてくれるかどうか」ではなく、「入社したら活躍してくれるのか」に移行していくと思います。そのため学生には、「自分を採用することが会社の利益にどうつながるか」をアピールすることが必要になってくるのではないでしょうか。
WEBでいつでもつながる環境構築に注力
――2022年卒採用に向けた、貴社の商品・サービスのコンセプト、特徴をお聞かせください。
学生向けのサービス・コンセプトは前年と同様、「さいしょの一歩を、いっしょに」です。先行き不透明な就職活動を行う中、学生の不安な気持ちを取り除いていけるようなスタンスが必要だと思っています。引き続き学生に寄り添って就職活動を支援していきたいと思います。そのためには、より一層企業と学生のコミュニケーションの量を増やしていかなければなりません。
マイナビはこれまでも、企業が独自に行うセミナーをWEB化する支援を行ってきましたが、2022年卒向けでは、マイナビ上で説明会を設定したら、URLが発行されて学生に案内できるようになります。マイナビを活用しながら、WEBでいつでもつながることのできる環境を構築したわけです。前年から、OB・OG予約機能を作りましたが、それと組み合わせることで、OB・OGとのWEB面談も行いやすくなります。単純な説明会や人事との面談だけではなく、OB・OGを含めてWEBでアクションを取れるのは、ぜひ利用していただきたい機能です。
さらに、当社は全国にスタジオを完備しているので、企業のWEB説明会のコンテンツ制作の支援、動画のクオリティを高めるためのアクションも、他の就職サイト以上にご支援できると考えています。
――他に新しいサービスはありますか。
2021年卒では、多くの合同企業説明会を中止にせざるを得ませんでしたが、学生や企業から「参加したい」という声が多かったので、2022年卒では安心してお越しいただけるよう、安全面に最大限の配慮をしながら開催を予定しています。ただ、不安な学生もいると思うので、WEBと対面の両方から企業も学生も選べるというハイブリッド型のイベントも並行して実施します。企業は会場のブースで対面での説明を行いながら、自社に割り当てられた時間が来たら同じ会場内にある配信ブースでWEBでの説明も行う、という仕掛けです。学生は、対面でもWEBでも説明を聞くいことができます。これはまさに、ニューノーマルならではの企画です。
そのほかにも採用に関するさまざまなメニューをご用意していますので、採用意欲が高い企業はもちろん、厳選採用を行う企業にも対応できるようになっています。具体的には、適性テストやアウトソーシングサービス、AIを活用したエントリーシート優先的な診断サービス(PraiO)、データベースのアクセスオンラインなど。企業の採用工程の効率化を担うサービスを多数取りそろえています。2022年卒採用では、企業の意欲は千差万別だと思われますが、漠然とした課題でも結構ですので、いつでも当社にご相談ください。
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企業データ
社名 | 株式会社マイナビ |
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本社所在地 | 〒100-0003 東京都千代田区一ツ橋1-1-1 |
事業内容 |
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設立 | 1973年8月15日 |
代表者名 | 代表取締役社長 中川 信行 |