就職活動以外での企業と学生との出会いの創出や
管理業務の効率化で企業の採用活動をトータルに支える「マイナビ」
2024年卒の新卒採用は企業の採用意欲が依然として高く、学生の内々定取得時期も早期化している。24年卒採用に成功した企業にはどのような特徴があったのか。また、2025年卒新卒採用はどう動くべきなのか。株式会社マイナビ 事業推進統括事業部の大塚 亮氏に、24年卒採用の傾向とトレンドを踏まえた2025年卒採用の展望、企業の採用活動を支援する同社のサービスについてうかがった。
学生の要望に合った活動方法や制度の変更をした企業が成功した
―― 2024年卒採用には、どのような特徴がありましたか。
当社が行っている経年調査からは、学生に四つの特徴が見られました。一つ目はキャリア志向の変化です。「楽しく働きたい」と考える学生が増加しました。キャリア志向は経済不況や災害などの社会情勢に連動する傾向にありますが、移動制限がなくなるなど、コロナ禍が落ち着いてきたことが影響したのだと考えられます。
企業選びの軸として「安定している」「給与が良い」を選ぶ学生は、過去10年間で右肩上がりに増えています。コロナ禍と関わりなく、将来に不安を感じていて、現実的に企業を選択する学生が増えているのでしょう。また、23年卒と24年卒を比較すると「ホテル・旅行」「鉄道・航空」を志望する学生が増えました。コロナ禍が終わり、こうした業界が採用を再開していることが背景にあると考えられます。
また、キャリアへの向き合い方として、会社に委ねるのではなく「自分でキャリアを選択したい」と考える学生が増加傾向にあります。ジョブ型採用や職種別採用に関する興味・関心も年々上昇しています。
二つ目として、大学3年生の夏の活動がさらに活発化し、インターンシップ・仕事体験への参加割合が増加しています。また、複数日程のプログラムへの参加率が前年より高まっています。
期間が長いプログラムには、実際の仕事内容に踏み込んだ体験や、企業からの充実したフィードバックを期待しているようです。学生は「働くイメージを具体化したい」「会社・職種が自分に合っているのかを見極めたい」という気持ちが強く、ワークショップではなく実務が体験できるプログラムに関心が集まっています。また、就職活動が長期にわたる中、フィードバックを受けることでモチベーションを再度高めたいという声も聞かれました。
三つ目の特徴は、活動量です。学生は、インターンシップなどの参加によって早くから志望業界を絞り込む傾向があり、応募社数は減っています。ただし、比較検討ができるように、面接を受ける社数はやや増加傾向にあります。
そして四つ目の特徴は、内々定の取得時期の早期化です。3月末で30.0%、4月時点では半数以上の学生が内定を獲得しています。昨年比で4〜6ポイントの増加です。一方で、苦労している学生がいるのも事実です。コロナ禍でオンライン選考の割合が増えたため、対面での選考への回帰が進む現在も、面接官と対面で話すことになかなか慣れないという声が聞かれます。大学生活で社会人と接する機会も少なかったため、企業側が考慮する必要があるでしょう。
―― 企業側はどうでしょうか。採用に成功した企業に傾向はありますか。
採用意欲が高い状態が続いています。採用人数を「前年並み」と答えた企業が7割を超え、「減らした」企業は減少しました。「マイナビ」の掲載社数も2年連続増加しています。
しかし、結果としては採用予定数の確保が難しい企業は46.1%と半数近くにのぼり、企業側は苦戦を強いられました。特に非上場企業の採用充足予測が低く、新卒採用の難易度が高まっています。
採用に成功するポイントは、活動方法と制度です。活動方法については、学生がインターンシップ・仕事体験などのキャリア形成を始めるタイミングで接触することが重要です。採用予定数を確保できた企業は、インターンシップ・仕事体験を早期から実施していた傾向がありました。さらに、インターンシップから選考までの期間中もコミュニケーションの機会をつくるなど、接点を持ち続け、自社を印象づけていました。
制度面では、職種や配属先を確約するなど、採用制度や社内制度を変えていました。具体的には、コース別の採用方式、初期配属先の確約、給与制度の見直しなどです。インターンシップ開催時点でも、インターンシップ・仕事体験のプログラムを職種別に分けるなど、学生のキャリア志向に合わせた改善を行っています。
働くイメージが湧くインターンシップや選考で学生の志望度を引き上げる
―― 2025年卒採用はどのような動きが予想されますか。
学生は、夏のインターンシップ・仕事体験に活発に参加しています。2023年7月時点で約半数の学生が「キャリア形成に関わるプログラムに参加した」と回答しています。短期間のプログラムが気軽に参加しやすい一方で、満足度が高いのは就業体験や実務体験があるプログラムです。
企業側は二つのトレンドを抑えておく必要があります。一つは、ChatGPTに代表されるAIツールの利用です。エントリーシートの作成でAIツールを利用した学生は10%程度とまだ多くありませんが、今後増えてくる可能性があります。その場合、企業側はエントリーシートの見極めが難しくなる可能性もあります。
もう一つは、三省合意改正による影響です。経産省・厚労省・文科省の三省が、インターンシップを含めたキャリア形成支援に関する取り組みを再定義しました。具体的には、一定の基準に準拠するインターンシップで得られた学生の情報を、採用活動開始後に活用ができるというものです。多くの条件があるため、実施している企業はまだ一部ですが、徐々に一般化していくでしょう。
当社としては、改正に伴う学生・企業への周知と実施実態の把握が必要だと考えています。「マイナビ2025」においては、掲載可能なプログラムの変更は行わず、ルールの周知の強化に努めていきます。
―― こうした状況を踏まえて、企業はどのように採用活動を進めるべきでしょうか。
企業の対応が良ければ、学生の志望度は引き上がります。そのため、学生が知りたい情報や経験を踏まえた接触ポイントの設計が必要です。例えばインターンシップ期においては、職種別のプログラムや実務体験ができるプログラムなど、より実務に踏み込んだ内容を実施するとよいでしょう。インターンシップ・仕事体験を実施しない企業は、会社説明会や面接などで、学生が実際の仕事をイメージしやすいように工夫することが重要です。
実際の仕事内容や社風を伝える際は、社員を学生に会わせると効果的です。OB・OG訪問の実施が難しい場合は、座談会などを設けるとよいでしょう。内定辞退対策として、座談会に効果があったと感じている企業は多いようです。
また、学生は個別のフィードバックを求めています。グループディスカッション後のフィードバックについて、47%の学生が「印象が良くなることが多かった」と答えています。フィードバックを行う際は、個人やグループの評価した点や改善点などを伝えると良いでしょう。
学生との早期の出会いの実現と、企業の管理業務の効率化をはかる
―― ここまでの解説を踏まえ、貴社のサービスについて教えてください。
マイナビでは、二つの取り組みに注力しています。
一つは、キャリア形成を「学び」の切り口で支援すること。2023年4月に、学生のキャリア形成を「学び」の切り口で支援する新サービス「My CareerStudy」をリリースしました。低学年から利用が可能で、学生の自己理解を促し、なりたい自分像を定め、その実現に向けた学びを支援します。
学生は社会人基礎力やビジネススキルのほか、キャリアデザインに関する学習コンテンツ、自己理解に役立つ診断ツールなどを受講し、さらに記事コンテンツや動画で業界研究などを行うことが可能です。
学習コンテンツと記事コンテンツは企業も掲載することができ、学生の学びを支援しながら企業広報を行うことが可能です。就職活動以外のシーンで学生との出会いをつくることができます。
もう一つは、応募者管理サービスと提出物管理サービスの機能をアップグレードしたこと。マイナビサイトを利用する3万社が導入している応募管理サービス「MIWS」と、企業6000社・学生30万人以上が利用しているエントリーシートなどの提出物管理サービス「My CareerBox」の二つのサービスを一つにまとめました。このリニューアルは、以前から多くの要望をいただいていたものです。
応募管理と提出物管理が統合されることで、企業の作業効率は上がります。学生にとっては一度基本情報を作成すれば他社にも転用できるため、エントリーシート作成の負担が減ります。提出率のアップも期待できるでしょう。
マイナビはただ応募を集めるだけではなく、採用した人が活躍するまでをゴールだと考え、そのためのサービスをそろえています。今後も、「一人ひとりの可能性と向き合い、未来が見える世界をつくる。」というパーパスに根ざしたサービスを目指していきます。
バックナンバー/2022年卒採用インタビュー
バックナンバー/2021年卒採用インタビュー
バックナンバー/2020年卒採用インタビュー
バックナンバー/2019年卒採用インタビュー
バックナンバー/2018年卒採用インタビュー
企業データ
社名 | 株式会社マイナビ |
---|---|
本社所在地 | 〒100-0003 東京都千代田区一ツ橋1-1-1 |
事業内容 |
|
設立 | 1973年8月15日 |
代表者名 | 代表取締役 社長執行役員 土屋 芳明 |